月面で自律走行&撮影に成功 直径8センチの小型ロボ「SORA-Q」は玩具技術の結晶
「SLIM」は月面で逆さまになっていた――。1月に日本初の月面着陸に成功した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM」。太陽電池が発電しないトラブルに見舞われたが、その謎の答えを示したのはSLIMとともに月面に着陸した変形型月面ロボット「LEV-2」(愛称:SORA-Q)が撮影した1枚の画像だった。月面に逆さまになったような状態で接地しているSLIMをしっかりと写した1枚は衝撃を与えた。この撮影を可能にしたSORA-Qの開発をめぐる秘密を、関係者の話から解き明かす。(文・写真:科学ライター・荒舩良孝/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
SORA-QのSLIM撮影は遠隔指令を受けたものではなかった
「月面のSORA-Qから送られた画像を見たときは嬉しかった。ちゃんと動いて役割を果たしたのが一目でわかり、チームメンバーと喜び合いました」 JAXA宇宙探査イノベーションハブに所属する平野大地さんはそう振り返った。 1月20日午前0時20分ごろ(日本時間)、JAXAの小型月着陸実証機SLIMが月面着陸に成功した。目標地点から55メートルほどの誤差で着陸した世界初のピンポイント着陸だった。その直前、SLIMに搭載された2つの機体が月面に放出されていた。一つはLEV-1(Lunar Excursion Vehicle-1)と呼ばれる超小型月面探査ローバー、もう一つはLEV-2と呼ばれる変形型月面ロボット「SORA-Q」だ。
月面着陸時、SLIMはエンジントラブルを起こしながらも何とか着陸したが、太陽電池が発電しなかった。その理由が同時に月面に着陸していたSORA-Qから送られてきた画像ではっきりとわかった。 画像にはゴツゴツとした月面の岩石の上にSLIMがたたずむ姿が写し出されていた。画像をよく見ると、SLIMは逆立ちしたような姿勢で月面に接地しており、機体に搭載された太陽電池が太陽とは反対の方向を向いていた。このため、着陸直後のSLIMの太陽電池は発電しなかったのだ。