給付金は効果あり? 街角景気が急改善 カギ握る倒産件数
内閣府が7月8日に発表した「景気ウォッチャー」調査では景況感の急激な改善が浮き彫りになりました。しかし景気の先行きは必ずしも楽観的とは言えないようです。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】不思議と一致する街角景気と日本株 その背景にあるものは?
10万円給付金が家電買い換え財源に?
日本経済の動向をつかむ上で有用な指標として景気ウォッチャー調査があります。この指標は消費者に身近なところでビジネスを展開する人たち(約2000人)が肌で感じた景況感を数値化したものです。調査対象にはスーパーやコンビニ、家電量販店、アパレル、ホームセンターに自動車販売など小売業に従事する人のほか、不動産業、人材派遣業、さらにはタクシードライバーなど幅広い業種が含まれます。調査期間は毎月25日から月末までで、公表は毎月第6営業日(今月は8日)です。調査から公表に至るまでの期間が2週間と短いため、速報性に優れた経済指標として重宝されています。
景気ウォッチャー調査はコロナ禍の初期段階にあたる2月に急落した後、3月に一段と水準を切り下げ、4月は歴史的低水準に沈みました。緊急事態宣言が解除された5月(下旬)に底打ちすると、6月は鋭い改善を示し昨秋と同レベルまで戻しました。緊急事態宣言解除に伴い、飲食店・小売店などの営業が再開されたことに加え、特別定額給付金10万円の支給が効果を発揮した模様です。
10万円の給付金については、その効果を疑問視する向きも多いですが、実際、家電量販店の売上は5月中旬頃から顕著に伸びています。テレワーク対応でPCの売れ行きが順調なのはよく報じられていましたが、エアコンや洗濯機、冷蔵庫など広範な品目が伸びています(データは経済産業が公表しているPOSデータを参照)。今から10年ほど前、2009年5月から約2年間実施された「家電エコポイント」制度時に購入された家電が買い替えサイクルに入っていることもあり、給付金が家電などの耐久財に向かっている可能性が指摘できます。 もっとも、先行きについては慎重にならざるを得ません。給付金の景気刺激効果が薄れていくほか、「密」を避けるための営業コストや海外経済の落ち込みが重くのしかかるからです。飲食店などのような「BtoC」の事業を展開する業種ではコロナ禍以前の状態に戻ることは時間がかかると予想され、製造業では世界経済の減速を受け自動車などの輸出停滞が予想されます。