欧米経済、コロナ禍から復調気配 小売・娯楽施設への移動が増加
コロナ禍でストップした世界の経済活動が少しずつ動き始めています。外出制限が欧米諸国で少しつづ緩和され、地域によっては人々の移動が見られるようになってきました。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】コロナ自粛緩和 世界で戻りつつある“日常”つかむ経済データ
各国共通の傾向で「公園→小売・娯楽施設」
経済活動再開の動きをタイムリーに把握する上では、GoogleやAppleが提供するモビリティレポート(スマホのデータを基に人々の移動量を計測したもの)が有用です。これらデータによれば、人々の移動量は着実に持ち直し、経済活動がよみがえりつつある様子が窺えます。
まずAppleのデータに目を向けると、一部地域で公共交通機関による移動量が持ち直しつつあるほか、広範な地域で自動車による移動量の回復が見て取れます。「1月13日を100」とした指数は米国とドイツが100を超え、厳格な移動制限を解除したフランス、イタリア、スペインも低水準ながらも増加傾向がはっきりとしてきました。日本は「緊急事態宣言」が解除されて間もないこともあってか顕著な持ち直しは認められないものの、目先は増加が見込まれます。このデータに鑑みれば、5月入り後に欧米経済が復調気配にあることは確かです。
次にGoogleのデータで人々の移動先をみると、各国共通の傾向として、公園への移動が顕著に増加した後に小売店・娯楽施設への移動が増加します。公園への移動は必ずしも経済活動(GDPの押し上げ)にはつながらないため、あくまで外出制限の解除を映し出す一つの鏡にしかなりませんが、一方で小売店(スーパー、薬局以外)や娯楽施設への移動は個人消費と強い連動性を有するとみられ、注目に値します(直近値は5月21日)。このデータによれば米国、ドイツのレベルが高く、ここへ来てフランスなどが追随しています。日本はやはり大都市が「緊急事態宣言」下にあったこともあり、持ち直しは確認できませんが、宣言解除後は増加が見込まれます。個人消費の反発力を計測するにあたっては、この指標を注視すべきでしょう。