給付金は効果あり? 街角景気が急改善 カギ握る倒産件数
通常の景気後退局面と異なり倒産は抑制
そうした不透明感が漂う中、人々が最も恐れるのは「失業」でしょう。その点、重要なのは「倒産」の抑制です。特に中小企業における倒産は、そこで働く従業員の失業を意味するので要注意です。雇用者の約7割が中小企業に雇われていることを踏まえれば、「倒産=失業」と解釈してもさほど問題はないでしょう。 現在得られているデータから判断すると、倒産の発生は抑制されています。やや意外かもしれませんが、倒産件数は4~6月平均が612件と1~3月平均の721件を下回っています。背景にあるのは政府と日銀による資金繰り支援策でしょう。景気対策の柱として講じられた実質無利子・無担保融資(セーフティーネットや政策金融公庫による融資)が奏功したほか、日銀が実施している「資金繰り支援のための特別プログラム」が効いた模様です。後者は、日銀が金融機関にゼロ金利で資金を供給し、コロナ禍で苦しむ企業への融資を後押しする仕組みです。 通常の景気後退局面では、銀行が融資基準を厳格化することで企業の資金繰りが途絶え、倒産が増加し、失業率が上昇します。しかしながら、コロナ禍においては、政策当局が半ば政策的に銀行の融資姿勢をコントロールしたことで、倒産の封じ込めに成功しているようにみえます。過去の景気後退局面では銀行の融資姿勢の厳格化が企業に資金ショートを意識させ、それが複数の経路を通じて経済を蝕んできましたが、その点で今回は過去の景気後退局面とは異なる構図となっています。過度な倒産抑制はゾンビ企業を発生させるといった副作用もありますが、現時点の評価として企業の資金調達環境が安定していることの意味は大きいと考えられます。今後、コロナ禍の景気対策をめぐっては、企業の資金調達環境及び倒産動向を注視していく必要があります。
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