「アフターコロナ」忘れかけていた5G特需がよみがえる?
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は世界の様相を一気に変えました。そのインパクトは「コロナ禍」「コロナショック」と呼ばれるほどで、経済にも甚大な影響を与えています。そんな中で、第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「コロナ以前」に予想されていた需要がコロナ後の世界に意外な形でよみがえる可能性を指摘します。藤代氏に寄稿してもらいました。 【写真】東京五輪「中止」でも日本経済は終わらない
コロナ禍でもプラス維持する5G需要
ビフォーコロナ(BC=before corona)における2020年のメインテーマは、次世代通信規格5Gの本格稼働が喚起する世界経済の加速でした。Iot(モノのインターネッと)、AI(人工知能)といった有望なテーマの進化と相まって、5G通信を可能にするための通信設備(基地局)や5G対応スマホなど、多くのIT関連財の需要増加が予想されていました。 こうしたテーマは新型コロナウイルスの感染拡大によって存在感が薄れています。しかしながら、3月までのデータをみる限り「5G特需」はしっかりと生き残っています。コロナ禍による世界経済の大幅な減速にもかかわらず、3月の世界半導体売上高は前月比+0.9%、前年比+6.7%のプラスを維持しました。サービス業が著しく落ち込み、製造業でも自動車業が大幅な停滞を強いられていることを踏まえると、この底堅さは目を見張るものがあります。日本の鉱工業生産統計(経済産業省)をみても、IC(集積回路)や半導体製造装置といったIT関連財の生産は増加基調にあります。
「財」の消費はサービス業ほど落ち込まず
目下の世界経済の急減速を踏まえると、IT関連財の回復持続は微妙に思えます。とはいえ、5Gの本格稼働を含めてBC時点の計画が撤回されたわけではありません。短期的にはサプライチェーン寸断によって生産が落ち込む可能性はあるとしても、やや長い目でみれば、IT関連財の需要は底堅く推移する可能性があるでしょう。 ここで重要なのは、財消費をめぐる環境がサービス業ほど悪くはないことです。人々の外出が制限(自粛)される以上、サービス消費が落ち込むのは当然ですが、一方で消費者はEC(電子商取引)を通じて財を購入できますし、生産者側も一部の例外を除いて(需要さえあれば)生産が可能です。