夫が不倫して逃亡、子どもはがんに…押し寄せる試練も「救いの手」受け取らず 衝撃受けた日本のシングルマザーの過酷な実態
なぜ日本のシングルマザーは就業率が高いのに苦しいのか オーストラリアと比較
映画には複数のシングルマザーが登場し、それぞれの経験を語っています。また、14年の銚子事件、15年に川崎で起きた中1男子殺害事件にも触れ、貧困がもたらす問題の悲惨さを伝えています。 日本のシングルマザーが苦しい原因については、「やはり仕事ですね。85%がフルタイムで働いているのに56%が貧困になっている。最初はあり得ない数字だと思いました」と指摘します。就業率は高いのに、賃金が十分ではありません。厚生労働省の18年の調査によると、子ども1人のシングルマザーの平均年収は約175万円未満、子ども2人だと約215万円未満です。7人に1人が生活保護を受けています。養育費を払わない元夫も多く、外国のように運転免許やパスポートを没収されるようなペナルティーもありません。 「最初、実は1人親の映画を作ろうと思ったんですよ。シングルファーザーとシングルマザー。もちろん、パパたちも大変だと思うんです。でも、貧困率が全然違うから、今回はシングルマザーにしようというのを途中で決めたんですね」 さらにマカヴォイ監督は、日本は行政の支援も十分でないと訴えます。母国との比較で、こう話しました。 「オーストラリアではシングルマザーになった瞬間にどこへ行けばいいか調べなくても分かります。窓口でも『2週間ごとにこのぐらいもらえます。今日から始まります。はい、どうぞ』という感じです。日本の場合は市役所に行っても情報がバラバラすぎて窓口が分かりにくい。それが一番大きな違いだと思います。あと、よく聞いたのが、市役所のおじさんが変な質問をする。あなたの旦那どこ? なんで別れたの? とか。だからやっぱりいいやと思って自分で頑張るっていう選択になるんですね」 オーストラリアでもフルタイムの収入は「十分かと言えば、そうではないと思います」との見方です。「ただ、最初からどこへ行けばいいかすぐ分かって、不安がないんですね。足りない不安はあるかもしれないですけど、お金をもらえない、どうしようという不安がありません」。さらに、働くママを後押する文化も浸透しています。「ベビーシッターは普通に学生がアルバイトとしてやっていますし、自分も頼んだことがあります。日本はほかの人の家に入ることがなかなかないですよね」と付け加えました。