叱る指導ではオリンピックでメダルを取れる選手は育たない? 「勝つためには苦しい思いをしなければならない」と思い込んでいた元女子バレー日本代表・大山加奈に、怒らない指導者が教えたこと
トップレベルの選手に必要なのは「主体的に考える力」
大山 私も経験がありますが、言われたことをやっていればいいので、受動的になります。「また怒られるんじゃないか」といつも恐怖を感じていて、「怒られないようにすること」ばかり意識するので、チャレンジすることを怖れるようになります。「どうしたらいいか」を自分で考えなくなります。 村中 そうなんです。はたしてそれが選手としていいことかどうか。スポーツ選手は、その場その場の状況に即して、「ここでどういう選択をするべきか」「どうすればいまの流れを切り替えて有利な状況にもっていけるか」といったことを、主体的に判断して動かなくてはいけない。それができるのが優れた選手の条件になるはずなんですが、怒られてばかりいる環境では、その能力が磨かれていきません。 大山 練習というのは、単に技術を磨くだけでなく、そういう能力をつけていくためのものでもあります。普段から、自分たちで突破すべき課題を設定して、どうすればクリアできるかを考えるという主体性がとても大事だと思います。 ただ、それって難しいんですよね。怒られて、監督に言われたままにやっているほうが、ある意味ラクなんです。 村中 前に為末大(ためすえ だい)さんとお話しする機会があって、そのときに印象深かったのが、「たぶん小中高ぐらいまでだったら、叱る指導で勝てちゃうだろうけど、叱る指導を受けていた選手の中から、オリンピックで金メダルを獲る選手は出てこないだろう」という言葉なんです。 指導者が自分の思う通りにやらせる指導法でも、そこそこ強くはなれるかもしれない。だけど、本当にトップレベルで活躍できる選手に育つかどうか、その鍵を握るのが「主体的に考える力」が身についているか、ということなんだろうな、とそのとき思ったんですよ。 大山 私の恩師は、まさにいまのお話にあったような、主体的・自律的に自分たちで考えさせる指導をする監督でした。私は中学から成徳学園に進み、高校も成徳学園(現・下北沢成徳)高校なんですが、高校時代のバレー部監督・小川良樹先生がそうだったんです。
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