J開幕戦で川崎Fが快勝も2ゴールの“寡黙な仕事人”家長が反省を口にした理由とは?
素早い出足でマリノスのクリアを拾った田中が、脇坂、FWレアンドロ・ダミアンと立て続けにワンツーを成功させて右サイドを抜け出す。ダミアンと入れ替わるように相手ゴール前にポジションを取っていた家長は、日本代表経験のあるDF畠中槙之輔と駆け引きを繰り返していた。 「アオ(田中)が抜け出した瞬間に、いいクロスが上がってくると思いました。なので、いいポジションを取っていたら非常にいいボールが来たので、決められてよかったです」 言葉少なに振り返った家長は、最初は畠中の背後、ちょうど死角になる位置にポジションを取った。そして田中が低く、速いクロスをニアサイドへ放った瞬間に畠中の前方に現れ、そのままゴール右ポストの方向へ向かって加速。最後は豪快なダイビングヘッドを見舞い、再びゴールネットを揺らした。なすすべなく追加点を見送るだけだった畠中は、思わず天を仰いでいる。 「2点を取れたのはできすぎですね。その他の自分のプレーは、いたって普通だったので」 自己採点が厳しめだったのは前半32分のミスが影響している。左サイドを抜け出したダミアンの折り返しにフリーの状態で左足を合わせながら、シュートはゴールの枠を大きく越えていった。思わずその場にひざまずいた家長だったが、周囲とのコンビネーション、特に昨シーズンに湘南ベルマーレから加入した山根との間で築かれた、右サイドにおける縦の関係はさらに磨きがかかっていた。 一方で昨シーズンまでと比べて、チームのなかにおいて大きく変わった点もある。川崎ひと筋で18年間プレーしたレジェンド、中村憲剛さんの突然の現役引退とともにフィールドプレーヤーで最年長になった。何よりも家長自身が中村さんに魅せられ、2017シーズンに川崎へ加入した。 「川崎の選手たちのパス回しやトラップ、あるいはポジショニングは、実際に試合で対戦していても細かくて正確で、ボールを奪おうと思ってもまったく何もできなかった」 確固たる居場所を築き上げていた大宮アルディージャの一員として、川崎と試合をするたびに受けた感銘を家長はこう振り返る。特に家長が30歳になった2016シーズン。優勝こそ逃したものの、川崎はJリーグチャンピオンシップに出場し、中村さんは歴代最年長となる36歳でMVPを獲得した。