石井采配がズバリで首位追撃…楽天がノーノーにあと5アウトの岸&2年ぶり抜擢オコエの先制打で後半開幕戦を白星発進!
東京五輪による中断から1ヵ月ぶりに再開されたペナントレースで、楽天のベテラン右腕、36歳の岸孝之がノーヒットノーラン達成まであと5アウトの快投を演じた。 敵地メットライフドームで13日に行われた西武との13回戦。後半戦の“開幕投手”を託された岸は、緩急を駆使した投球で10三振を奪うなど古巣の西武打線を翻弄。自身2度目、楽天では球団史上初の大記録達成の予感が漂ってきた8回一死で初安打を許してお役御免になったが、7回3分の1を無失点に封じて5勝目(6敗)をあげた。 打線は「7番・ライト」で約2年ぶりに先発出場した、入団6年目のオコエ瑠偉が2回に先制打をマーク。悲願の金メダルを獲得した東京五輪で侍ジャパンの主軸を担った浅村栄斗も5回に2点タイムリーを放つなど、2位で折り返した後半戦の初戦を5-0の快勝で飾り、首位オリックスに1.5ゲーム差で食らいついた。
113球目にヒットを浴び大記録逃す
マウンドを降りてくる投手の労をねぎらおうと、球審に交代を告げた指揮官がベンチの前で待っている。なかなか見られない光景には、後半戦初戦の先発マウンドを託した岸に注がれる石井一久監督の感謝の思いが反映されていた。 3つの四球を与えただけで、西武打線をノーヒットに封じ込めて迎えた8回。先頭の7番・呉念庭をライトフライに打ち取った。続く8番・愛斗はそれまで2打席とも空振り三振。しかも5回の第2打席では、わずか3球でバットに空を切らせていた。 いよいよ高まってくる大記録達成への予感。敵地メットライフドームにも緊張感が漂ってきたなかで、愛斗も瞬く間に1-2と追い込まれた。数えること113球目。143kmの直球は要求された外角低目ではなく、真ん中に甘く入ってきた。 初ヒットを打たれた時点で迷わず代える、とベンチでは決められていたのだろう。快音を残した打球がライト前に弾み、西武時代の2014年5月2日のロッテ戦以来となる、自身2度目のノーヒットノーラン達成を逃した直後に、小山伸一郎投手コーチがマウンドに向かい、石井監督が白井一行球審に2番手・安樂智大への交代を告げた。 今シーズン最多タイの113球を投げた疲労感。最多となる10三振を奪って無失点に封じた充実感。そして、走者を残した状況への一抹の悔しさ。さまざまな思いを同居させながらベンチへ戻ってきた岸へ、石井監督がマスク越しに声をかけた。 果たして、どのような会話が交わされていたのか。試合後のヒーローインタビューで問いかけられた岸は、ちょっぴりはにかみながら指揮官とのやり取りを明かしている。