石井采配がズバリで首位追撃…楽天がノーノーにあと5アウトの岸&2年ぶり抜擢オコエの先制打で後半開幕戦を白星発進!
オコエの先発出場は2019年9月26日の西武戦以来、実に687日ぶりだった。関東一高から2015年のドラフト1位で入団するも、期待された走攻守における身体能力の高さをなかなかプロの舞台で発揮できない。昨オフの契約更改の席では、兼任するゼネラルマネージャーの立場から、石井監督に苦言を呈されている。 「考えがまだ甘い。そろそろ出てこないと、野球人生が苦しくなってくる」 気持ちを切り替えて臨んだはずの今シーズンも、左手首のけがで春季キャンプに参加できず、2月下旬には負傷箇所の手術を受けた。復帰を果たしたのは6月下旬。ファームの試合で代走からチャンスをつかみ、東京五輪期間中に行われたエキシビションマッチで5試合に出場。10打数3安打と結果を残し、後半戦初戦での先発を勝ち取った。 奮起をさらに促したのは1学年年下の妹、桃仁花の存在だった。富士通に所属する桃仁花は東京五輪のバスケットボール女子日本代表に選出され、男女を通じて日本の五輪史上で初めて決勝に進出。銀メダリストになった快挙に刺激を受けないはずがない。 先制タイムリーを放っても表情ひとつ変えなかったオコエは、先制のホームを踏んだ茂木からガッツポーズでエールを送られて初めて笑みを浮かべた。迎えた最終回。中村のライトフライを捕り、ウイニングボールを手にしたのもオコエだった。 「勝ててホッとしています。もっともっと勝って、チーム一丸となって(ファンのみなさんに)喜んでもらえるように頑張りたい」 オコエを含めた、チーム全員の思いを岸が代弁した。夏場に入っても安定感をキープするベテラン右腕に、覚醒を期待され続けた大器が放った先制打。金メダルとともに凱旋した浅村も、バットをへし折られながらもレフト前に2点タイムリーを運んだ。 首位オリックスとの1.5ゲーム差をキープし、逆に3位ロッテとは2ゲーム差に広がった。4位ソフトバンクを含めて、おそらくは終盤まで混戦が続くパ・リーグ戦線を勝ち抜いていく上で弾みがつく価値ある白星を、大事な後半戦初戦で楽天が手にした。 (文責・藤江直人/スポーツライター)