韓国戦、なぜ侍ジャパンは連続抗議に動じず25年ぶりの五輪決勝進出を決めたのか…甲斐のMVP級活躍と金メダル方程式
東京五輪、野球競技の準決勝が4日、横浜スタジアムで行われ、日本は韓国に5-2で競り勝ち決勝へコマを進め銀メダル以上を確定させた。五輪での決勝進出は、オールアマで挑んだ1996年のアトランタ五輪以来、25年ぶり。2点のリードを守れず6回に同点に追いつかれる嫌な流れだったが、8回に山田哲人(ヤクルト)が二死満塁から、あわや満塁アーチの走者一掃のタイムリーツーベースを放ち勝負を決めた。決勝戦は韓国と米国の勝者と7日に同スタジアムで行われる。
「初球を打つと決めていた」山田が走者一掃決勝二塁打
ネクストバッターズサークルにいる山田は覚悟を固めていた。 「1球目から打つというのは決めていた。速い真っすぐを仕留めるぞという気持ちでいきました」 2-2の同点で迎えた8回二死満塁。韓国の4番手、コ・ウソクが低めに投じたストレートを引きつけてコンパクトに捉えると打球はレフトフェンスを直撃した。あわや満塁アーチの強烈な一撃は、走者を一掃する価値ある3点タイムリーとなり、山田はセカンドベース上でガッツポーズをした。 「ボール一個分差し込まれたんですが、芯で捉えられたので打てた。とにかくめちゃくちゃ緊張していたんで、いい結果になってガッツポーズをしました」 粘る韓国との激戦に終止符を打つ一打。9回はカープの守護神から侍の守護神となっているルーキーの栗林が先頭に四球を与えながらも後続を抑えて悲願の決勝進出を決めた。 2009年、2013年と2度のWBCで三塁コーチを務め、昨年まで阪神コーチを務めていた高代延博氏は、8回の山田の一打にチームに染み込んでいる国際試合対策が見えたという。 「四球の後の初球狙いはセオリーだが、国際試合では、初見の投手も多くプレッシャーをはねのける意味でも積極的に振りながらタイミングを合わせていかねばならない。ドミニカ戦でサヨナラ打を打った坂本も初球。米国戦でサヨナラ打を打った甲斐も初球。何を狙うかの準備と、国際試合を戦う上での心得が、稲葉監督が侍を率いて何試合も経験するうちにチームに浸透しているように思えた」 その8回には際どい勝負の駆け引きがあった。 6回から小刻みに継投してきた韓国は右腕のコ・ウソクをマウンドに送ってきた。一死から柳田が逆方向に弾き返し出塁。続く近藤はタイミング的には完全に併殺の一塁ゴロに倒れたが、3-6-1とボールが渡り、ベースカバーに入ったコ・ウソクが慌てて一塁ベースを踏むことに失敗して近藤がセーフになった。だが、近藤は一塁ベースを通過後、ファウルゾーンに走り抜けるのではなく、逆に回り込むようにして大きくフェアゾーンに入った。それに気づいた韓国のコ・ウソクは近藤に駆け寄ってタッチ。一塁塁審はセーフのジェスチャーだったが、韓国側が抗議、審判の判断によるリプレーによる検証も行われたが、判定は変わらず命拾いした。 公認野球規則には「一塁をオーバーランまたはオーバースライドした走者が二塁へ進もうとする行為を示し触球されればアウトとなる」とあり、フェアゾーンにいたかどうかが問題ではなく、二塁への進塁の意思を見せたかどうかが判断ポイントとなり、ビデオを検証した結果、今回は「意思はなかった」とみなされた。 それでも高代氏は「近藤は不用意にフェアゾーンに入ってきた。二塁進塁の意思があったとみなされアウトになっても仕方がなかった。しかも、どんな判断が下されるかわからない国際試合。細心の注意を払い気をつけなければならないプレーだ」と指摘した。