今日菊花賞!史上初の”父子無敗3冠馬”に挑む単勝1.1倍人気のコントレイルに死角はないのか?
春の2冠での圧倒的なパフォーマンスを今さら語るまでもないかが、ぶっつけで臨んだ皐月賞は緩んだ馬場に脚を取られ、後方からの競馬となったが、その絶体絶命のピンチを勝負強さで切り抜けた。日本ダービーでは、最後の直線で「遊びながら」走って3馬身差の快勝。ちぎって捨てられたサリオスが、秋初戦の毎日王冠で古馬を軽く一蹴していることからも、その実力がズバ抜けているのがわかるだろう。 2冠馬にとって鬼門とも言える夏場を放牧先で順調に過ごし、フレッシュな状態で栗東トレーニングセンターに凱旋し、菊花賞への“前哨戦”となった9月27日の神戸新聞杯では単勝1. 1倍人気に一発回答。内枠を引いたこともあり、馬群のど真ん中でのレース運びとなったが、福永騎手は慌てず冷静に進路を確保すると瞬時に抜け出した。 「余力を持って勝つことができて何より」とニッコリ笑った福永騎手。矢作調教師も「無敗なので負けてはいけないという命題と、菊花賞に向けて負担をかけないという相反する命題をうまくクリアできた」と満足そうだった。万全な状態で3冠戦を迎えるのだ。 あえて死角を探すとすれば、中3週の厳しいローテーションだ。加えて、放牧を挟むことなく、栗東に在厩したままレースに臨むことによる精神面も不安な点。だが、矢作調教師はその不安点も一笑に付す。 「人間の方が心配していただけ。信頼してあげられなかった自分たちが反省しないといけないぐらい、馬は落ち着いています。菊花賞だからといって特別なことはしませんでした。この馬の良さは瞬発力とクレバーさ。長い距離を走るので仕上げすぎて馬を追い詰めないように心掛けました」
もうひとつの不安点は、未経験の京都コース。コントレイルは関西馬だが、淀でレースをしていない。京都は第3コーナーに坂のある独特のコースで、3000メートルの長丁場の菊花賞では、2度の坂越えがある。コントレイルは、スタート直後の下り坂で折り合いを欠くシーンが過去にしばしば見受けられた。思えばディープインパクトも似た傾向があった。 しかし、コントレイルは、強運の下に生まれているようだ。2枠3番と枠順に恵まれた。これでホープフルSから2番→1番→5番→2番とインばかりである。自在性に優れ、馬群の中でも、カッとならない気性、しかも極上の瞬発力を持っていることを思えば、内枠は大きなアドバンテージになるだろう。しかも両サイドが川田将雅騎手が乗るガロアクリークとミルコ・デムーロ騎手が手綱を取るマンオブスピリットと、どちらもスタートダッシュが鋭いタイプではなく、序盤にこすられる心配も少ない。 そして最大の疑問点は、3000メートルという距離適性。決してベストではないが、1983年のミスターシービーから、歴代3冠馬を見続けている超ベテランの某トラックマンは、「なんの問題もない。距離が伸びても、あの走りなら大丈夫だ」と言う。 今回、ヴァルコスを送り出す友道康夫調教師も「距離に不安がある、あると言われながら皐月賞、ダービーであの競馬ですから」と、距離に死角があるとは見ていない。 新型コロナの感染予防のため、今回の菊花賞は無観客レースとなる。そういう社会情勢も手伝って、コントレイルの3冠挑戦レースは、社会現象にまで発展していた15年前のディープインパクトの菊花賞に比べて、お祭り騒ぎにはなっていない。コントレイルを取り巻く環境も落ち着いている。寂しいとも言えるが、勝つためには、これも好条件。武豊騎手も「あのとき(ディープインパクト)とは全然違う。ユーイチ(福永) も落ち着いているよね」と言う。無観客競馬は、騎手のメンタルには、もちろん、視野、聴覚が鋭く、繊細な競走馬にとっても好影響を与えているのかもしれない。 とはいえ絶対がないのが競馬である。淀の3000メートルでは、ときに残酷とも思える逆転劇が起こっているのも事実だ。虎視眈々と打倒コントレイルに燃えている対抗馬も存在する。2番人気に支持されているのが、3枠6番のヴェルトライゼンデの11.3倍で、3番人気が、6枠11番のバビットの11.9倍である。2、3番人気のオッズが一桁でないのも驚きだが、面白いのはヴェルトライゼンデだ。