平成最後の有馬記念にドラマは生まれるのか?
年末の風物詩「第63回有馬記念」(G1)が12月23日、中山競馬場の芝2500メートルで争われる。すでに枠順が確定。決戦ムードが高まってきた。なかでも注目を集めるのが障害王から頂上決戦に挑む”二刀流”の7歳馬オジュウチョウサンだ。枠は1枠1番の好枠をゲット。鞍上には武豊が乗る。数々のドラマが生まれたグランプリの有馬記念。平成最後の有馬にどんな物語が待っているのか。
苦労馬のオジュウチョウサンに注目
大一番へ向け、報道がヒートアップしている。それも無理はない。障害王者オジュウチョウサンがファン投票3位となる10万票の熱い支持を得てのグランプリ初挑戦。競馬ファンの枠を超え、熱い視線が注がれている。 2013年のデビュー戦は11着。次戦も8着。1年の休養を経て、3戦目から障害戦へ転向したが、ここではなんと13秒7離されて、しんがり14着に敗れた。一時は競走馬として失格の烙印を押されかけながらも2015年の6戦目で初勝利を挙げると、徐々に力を蓄え、2016年春から障害G15勝を含む重賞9連勝を挙げた。 今春から再び平地競走に打って出ると500万、1000万下特別を2連勝。ファン投票10位以内という条件も楽々とクリアした。 馬名の由来は、馬主の株式会社チョウサンの代表である長山尚義氏のご子息が子供の頃、自分のことを「オレ」と発音できず「オジュウ」と言っていたことから。オーナーの家族愛がたっぷりとつまった馬名だ。今回の有馬には、G1馬が7頭参加。それなりのメンバーがそろっているが、どん底から這い上がってきたオジュウチョウサンが出ていなければ、ここまで注目度が増すこともなかっただろう。 しかも、鞍上は第一人者の武豊。クリンチャーやマカヒキとのコンビが可能な中で、この馬を選んだのも粋な演出に思える。 「珍しいパターンでの出走となりますが、オーナーや陣営の熱意が実ったもの。ドラマチックでマンガみたい。果敢に挑戦することが共感を呼んでいるのでしょう。ファンの多い馬ですし、騎乗できるのは光栄です。条件戦を2つ勝っているだけなので正直、一線級と戦うと厳しいと思いますが、スタミナ勝負に持ち込んで、いい結果を出したい」 オジュウチョウサンについては「体が柔らかく、頭の低い走り。障害馬っぽくないし、良馬場での走りも軽やかだった」と話している。 確かに、走破時計を比較すると劣勢だ。だが、もしかしたらと思わせるような材料がないこともない。まずは状態面。障害でコンビを組んでいた石神は1週前の追い切り後に「中山大障害を使えば、ぶっちぎるぐらいの状態の良さ。奇跡を起こしてくれそうな馬なので期待して見ています」とリップサービスした。 ステイゴールド産駒はオルフェーヴル、ゴールドシップといった超大物らによるものとはいえ、有馬記念で4勝。母の父は2002年、2003年と連覇したシンボリクリスエスという有馬御用達といっていいほど血統面での魅力がある。 もともと障害→平地というパターンは平地でのパフォーマンスを上げるためのケースが多い。元障害馬のグランプリ制覇は92年のメジロパーマーの例があるが、障害界を極めた後に平地G1へ参戦するのは1997年に天皇賞・春に出走したポレール以来と極めて希なケース。そのときは勝ち馬マヤノトップガンから3秒6差の12着に惨敗している。 当時、岩元市三厩舎でポレールを担当していた鈴木孝志・調教師は「あのころは中山大障害を勝つとオープン特別では70キロ近く背負わされるようになって使うところがなかったから」と振り返りつつ、同年の秋初戦となった京都大賞典で1着シルクジャスティス、2着ダンスパートナーからコンマ6秒差の6着に食い下がったことを強調した。 「あのとき、直線外から追い上げたときは”おおっ”と思いました。G1ホースを相手に結構やれたんですよ。オジュウチョウサンもうまくかみ合えば、いいところがあるかもしれません。夢があって、おもしろいチャレンジだと思います」とエールを送った。常識的には馬券圏内までを望むのは酷だが、何が起こるかわからないのが競馬だ。