4月の「マイナス金利解除」は少し後退? 日銀の政策指針をどう読み解くか
日銀は23日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和政策の維持を決めました。その中で日銀が発したメッセージから何が読み解けるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】日経平均なぜ3万円超え? 4つの視点から株価急上昇の要因を考える
フォワードガイダンスも修正なし
大方の予想どおり日銀は金融政策の現状維持を決定するとともに将来の政策指針、いわゆるフォワードガイダンスを維持しました。一部の市場関係者は(4月の)マイナス金利解除に向けてその地ならしを進めるべく、フォワードガイダンスの修正を予想していましたが、日銀はそれらを全てそのまま残しました。筆者も何らかの形でマイナス金利解除の「予告の予告」があることを身構えていました。
------------------- 「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。 -------------------
物価目標の見通し確度「少しずつ高まっている」
今回のポイントは、経済・物価の展望レポートにおいて、物価見通しに言及する段落で「消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて『物価安定の目標』に向けて徐々に高まっていくと考えられる。【こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている】」と追記されたことです(【】は筆者による注記)。このように自身の物価見通しに対する自信を示したことを、マイナス金利解除の布石と受け止めるのはやや行き過ぎている印象ですが、2025年度の物価見通しを引き上げた、その背景説明を明文化した意味は案外大きいかもしれません。 展望レポートの成長率・物価見通しは、2024年度のコア物価が引き下げられた反面、2025年度は上方修正されました。2024年度の変化についてはエネルギー価格の安定に加え、食料品価格の値上げ一服が背景にあるとみられ、日銀はこれを重く受け止めてはいないと思われます。生活必需品の値上げ一服は日銀にとってむしろ歓迎すべき事象ですらありそうです。その分、2024年度の成長率見通しを引き上げ、2025年度の物価見通しを上方修正することでバランスをとった形でしょう。