消えた1月の「マイナス金利解除」予想 円安は金融引き締め要素にはならず?
日銀の金融政策決定会合が22日から23日にかけて開かれます。12月に見られた「マイナス金利解除」予想は影を潜めたようですが、今後の金融政策の見通しについて、第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】日経平均なぜ3万円超え? 4つの視点から株価急上昇の要因を考える
12月会合や能登地震で予想に変化
1月23日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持が決定されると見込んでいます。すなわち、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度とするイールドカーブコントロール(YCC)政策の継続が決定されるでしょう。
昨年12月の段階では1月会合におけるマイナス金利解除を予想する向きがある程度のボリュームで存在していましたが、12月18、19日に開かれた金融政策決定会合で(マイナス金利解除に関する)示唆的な情報発信が一切なかったことに加えて、植田総裁の単独インタビュー(NHK)で緩和継続の方針が再度示されたことでマイナス金利解除の予想は後退していきました。その後、元日に発生した能登半島地震を受け、1月の金融政策決定会合におけるマイナス金利解除を予想する声はなくなり、現在のところ中心的な予想時期は4月となっています。 今回の注目点は日銀が四半期毎に発表する経済・物価の展望レポートの物価見通しです。報道によると、2024年度の物価見通し(除く生鮮食品)について、10月時点で前年度比+2.8%としていたものを2%台半ばに引き下げるとされています。下方修正は、原油価格下落が主因とのことですが、食料品の値上げが一服しつつあることも背景にあるとみられ、これまでの連続的な上方修正に歯止めがかかる形です。 全国消費者物価指数は11月時点で前年比+2.5%、12月東京都区部のそれは+2.1%と、それぞれ伸び率が鈍化傾向にありますから、これらの動きを踏まえた変更でしょう。賃金由来のインフレを重視する植田総裁にとって、原油や食料品価格の安定によるインフレ率鈍化は問題にならず、寧ろ歓迎すべき事象ですらありそうですが、それでも想定外の物価上昇が進むことで金融引き締めに追いやられる確率を減じるという点において、インフレ率見通しの下方修正は緩和長期化要因として理解しておくべきでしょう。