【Q&A】続く物価高、日銀の金融緩和政策の変更はあるか? どうなる金融政策決定会合
日銀の金融政策決定会合が開かれます。物価高が続く中、一部ではこれまで続けてきた金融緩和政策の変更を予想する向きもあります。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに展望を寄稿してもらいました。 【写真】日経平均なぜ3万円超え? 4つの視点から株価急上昇の要因を考える
賃金の持続的な上昇を確認する必要
7月27~28日の日程で開催される日銀の金融政策決定会合について情報を整理していきます。 まず金融政策について筆者は「現状維持」を予想しています。すなわち短期金利をマイナス0.1%、長期(10年)金利を0%程度とするイールドカーブコントロール(以下YCC)はそのまま継続される見込みです。以下、QA形式でポイントを整理します。 Q:足もとの消費者物価指数は、日銀の物価目標である2%を大幅に上回っているにもかかわらず、なぜ日銀は金融緩和を継続しているのか? A:直近6月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除いたベース)は前年比+3.3%と2%を大きく上回っています。ただしこの上昇率は2022年に輸入物価が急上昇した影響を強く受けているため、日銀はそうした要因を除いた「基調的な物価上昇率」は2%に到達していないと判断し、物価上昇の持続性に疑問を持っています。すなわち、輸入物価の上昇が終われば、日本国内の物価上昇も終わり、再びデフレ的な状況に陥ってしまうことを懸念しています。日銀は持続的な物価上昇を実現するためには、賃金の持続的な上昇を確認する必要があるとしています。 Q:では賃金上昇率はどう推移しているのか? A:2023年度の春闘は約30年ぶりの賃上げ率である2%程度で着地しました。ここでいう賃上げ率とは定期昇給を含まない、いわゆるベア相当部分で、昇給がない人の賃金(主に基本給部分)も2%上がる状態のことを意味します。毎月勤労統計によると、5月の所定内給与(一人当たりの基本給に相当)は前年比+1.8%でした。例年の傾向から判断すると春闘の結果が完全に反映されるのは7月頃ですから、そこに向けてもう一段の加速が期待されます。なお、7月分のデータが発表されるのは9月です。