日銀がYCCを再修正 物価見通しの大幅上方修正は利上げにつながるか?
日銀が金融緩和政策を再び修正しました。物価見通しも引き上げられましたが、インフレ抑制のための利上げは想定されるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】日経平均なぜ3万円超え? 4つの視点から株価急上昇の要因を考える
長期金利を厳格に抑えることの副作用に言及
10月31日の金融政策決定会合で日銀はイールドカーブコントロール(YCC)のさらなる柔軟化を決定しました。7月28日の金融政策決定会合で定めた長期金利の上限値1%について、「(1%以上の金利上昇を)厳格に抑制する」としていたものを、1%は「目途」であるとして上限値の解釈に幅を持たせました。今後、長期金利が1.0%に届いたとしても、それを無制限の国債買入れ(指値オペ)で抑制することは考えにくくなりました。長期金利の上限は撤廃されたと言っても良いでしょう 長期金利の上限を1.0%へ引き上げてからわずか3カ月で再度修正を実施した理由については声明文で以下のように素直に認識変更が認められていました(【】は筆者)。物価上昇が続く下で、金融市場でマイナス金利解除やYCC終了が織り込まれつつある中、政策変更の際に生じ得る(金利の)断層を予めならす意図が明確に伝わってきます。 「内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当である。この点、現在の状況において、原則として毎営業日1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、【長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなりうる】と判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととした。」
2024年度の物価見通しは0.9%pt引き上げ
今回、注目すべきは物価見通しの大幅な上方修正です。2023年度が+2.8%へと引き上げられたことは実勢から判断して想定の範囲内でしたが、2024年度が+2.8%へと0.9%ptも引き上げられたことは驚きでした。展望レポートの説明では、原油価格上昇と政府によるエネルギー価格の負担緩和策の反動が2024年に発現するとありました。 しかしながら、そうした影響を直接受けない生鮮食品とエネルギーを除いた、いわゆる日銀型コア物価も+1.9%へと0.2%pt引き上げられていたことに鑑みると、日銀は基調的な物価の上振れを予測に反映したと解釈するのが妥当でしょう。2025年度も+1.7%と2%に近づきました。