少年期の記憶とキッカケ戦略――ガンバ大阪が欧州クラブとの親善試合を続ける理由
今夏も多数の欧州クラブが来日し、Jリーグクラブと親善試合が行われる。世界規模のファンベースを有する欧州ビッグクラブにとって日本での興行は貴重なマーケティングの機会である一方で、Jリーグクラブとしてのメリットは何なのか。 本記事では7月25日(木)にレアル・ソシエダとの対戦を控えたガンバ大阪のケースを紹介する。2022年にはパリ・サン=ジェルマン(以下、PSG)及びアイントラハト・フランクフルト、2023年にはセルティックFCとの親善試合を行っている同クラブが欧州クラブと親善試合を続ける理由とは。(※文中、敬称略) 取材・文 玉利剛一(フットボリスタ編集部)
パナスタを持っているから対戦相手に選ばれる
今年5月に発表された『2023年度クラブ経営情報開示資料』によると、ガンバ大阪は65億7400万円の総売上のうち23億5000万円を“その他収入”が占めている。その内訳は選手の移籍に伴い発生する『トレーニング・コンペンセーション』や『連帯貢献金』の他、入場料収入としてはカウントされない『VIPルーム収入』などが挙げられる。そして、2022年以降の”その他収入”には『欧州クラブとの親善試合開催に伴う売上』も含まれている。 「(昨年開催された)セルティックFC戦の具体的な売上?そんなもん言えるかいな!(笑)」と、私の直球質問を交わすのはガンバ大阪で欧州クラブとの親善試合を主幹する伊藤慎次(パートナー推進部 部長)。関係各所との権利交渉をはじめ、PSGとの親善試合では選手入場時にピアニストの反田恭平による演奏演出も企画した。 具体的な売上額こそ非公開ながら「まぁまぁインパクトのある金額」となる理由の1つにガンバ大阪がパナソニックスタジアム吹田の指定管理者である点が挙げられる。欧州クラブの対戦相手として得られるマッチフィー配分金、放送権料の他、指定管理者としてスタジアム施設利用料は勿論、加算額(チケット収入やグッズ売上など)の一部も収入となる。 「サッカークラブとしてのガンバをチームAとするなら、パナスタの指定管理者としてのガンバはチームB。事業としてチームBの伸びしろは大きい。スタジアムグルメの売上、広告看板の掲出料売上……プロモーターと交渉した上で、イベント開催ごとに指定管理者としての収入を得ることができる。まだまだ稼働率の面では課題はありますけど、欧州クラブとの親善試合に関しては、欧州のスタジアムに近い雰囲気を創り出せるパナスタを持っているから(欧州クラブの)対戦相手としてガンバが選ばれている面もあって、そこはうちのアドバンテージ。今年は(京都)サンガも、ヴィッセル(神戸)も、セレッソ(大阪)も欧州クラブと親善試合をやるので、関西でガンバだけ開催なしということにならなくて良かったなと(笑)」