少年期の記憶とキッカケ戦略――ガンバ大阪が欧州クラブとの親善試合を続ける理由
国際試合経験と世界へのPR
クラブ経営は事業と競技の両軸だ。夏場の親善試合開催はポヤトス監督や松田浩フットボール本部本部長の理解があってこそ成り立っている。コンディション調整を優先する選択肢もあった中で、レアル・ソシエダとの親善試合を選択した理由の1つには強化への期待もあるという。 「ACLへの出場も近年は継続的にできていない中で、選手たちが国際試合経験を積めていないという課題があります。この中断期間に大学生やJクラブと練習試合をすることも検討しましたけど、それではチームとして更なる上積みはあまり期待できない。レアル・ソシエダとしてはプレシーズンマッチだから強度はそこまで高くならないにしても、一瞬の動きとか対戦することでダイレクトに欧州の基準を感じられるはず。そこは強化の観点からも意味があるというクラブの判断ですね」 チームの強化を図る一方で、欧州クラブとの親善試合には「ガンバにいい選手がいることを世界にPRする」側面もある。世界的に知名度のあるレアル・ソシエダとの一戦はスペイン国内をはじめ、世界で報じられる可能性があり、選手にとっては好パフォーマンスが欧州移籍への足掛かりとなる可能性もある。AFCアヤックスとの提携で促進されている対欧州の移籍戦略と絡めて、試合後はレアル・ソシエダ関係者のガンバ選手評に注目しても面白いかもしれない。 また、強化を目的とする国際親善試合としては、やはり提携関係にあるチョンブリーFC(タイ)とのアカデミー年代での交流も計画されている。 「今もトップチームにチョンブリーFCの選手が2名(チャナロン選手、ヨサコン選手)練習参加してくれていますけど、異国での経験値って大事だと思うんですよ。逆にガンバの選手がタイに行くと、でこぼこのピッチでもボールを正確にコントロールする選手や、プレー環境的には整っていなくてもハングリーにプレーする(現地の選手たちの)姿勢を見たら『俺もやんなきゃダメだな』と感じるところもあるでしょうし。これは選手だけではなくスタッフも含めて、ネットワークが広がっている中で、どんどん世界から学んでいかなアカンなと思ってますよ」