なぜ“投手”大谷翔平は進化したのか…制球力安定の裏にある「ショートアームアクション」と「ハイコックポジション」
エンゼルスの大谷翔平(27)は、40号を放ち、本塁打争いのトップを独走しているが、実は、投手としても8勝をマークし進化している。他球団を畏怖させているのは、その制球力だ。「1番・投手」で先発した18日のタイガース戦では6回まで64球を投げてボールはたった12球だった。1イニング平均わずか2球である。最終的にはメジャー移籍後最長となる8回を投げきり、投球数は90球でボールは21球。この数字――。実は、1回を投げきれなかった6月30日のヤンキース戦と同じである。あの日、41球を投げて21球がストライクゾーンを外れた。 もっとも、際立って制球が良かったのは今回のタイガース戦だけではない。ヤンキース戦以降、これまで6試合に先発し、4試合が無四球だ。 大谷は7月以降、5勝0敗、防御率1.58、WHIP0.75、K/BB9.25で、いずれも8月20日の時点でア・リーグトップの数字を残しており、その理由として本人は、「フォアボールが少ないのが一番」と話したが、では、いかにして四球を減らしていったのか。そこをたどっていくと、どうしてもヤンキース戦のイメージが強く、その前後で比較されがちだが、改めてシーズン全体を振り返るなら、改善の兆候はもっと早い段階から見えていた。 開幕からヤンキース戦までの12試合、大谷は60イニングで83三振を奪ったが、35四球を出している。その内、半分近い15個が初回。2回以降、徐々に立ち直るのが一つのパターンだった。もちろん、大谷もそれを自覚し、1安打、無失点ながら初回に2四球を与えるなど、計6四球を出したことで5回までしか投げられなかった5月5日のレイズ戦後、「初回の入り方は、どのピッチャーもやっぱり難しいところがあると思う」と前置きした上で、こう続けている。 「どちらかというと、投げ急ぎ、早く終わりたいというか、早く攻撃に移りたいという心理が働く。そこを毎回、落ち着いていけることが大事」 投げ急ぐと力が入る。左肩が開き、制球が乱れる悪循環。しかし、次の先発から徐々に制球が安定。ヤンキース戦の前まで、実は7試合で12四球しか与えていない。課題だった初回も安定し、その7試合では3四球だった。