なぜ大谷翔平は48打席も本塁打から遠ざかったのか…「四球攻め」の真実と「1番起用」のジレンマ
「1番・大谷」が続いている。暫定的な起用ではあるが、どんな効果をもたらすのか。まだ4試合では評価が難しいものの、もちろん、様々な過程を経て、ジョー・マドン監督がたどり着いた一つの答えだ。今回、そこを掘り下げてみたい。
ますます勝負してもらえなくなった後半戦
8月8日(現地時間、以下すべて)、敵地で行われたドジャース戦。8回2死二、三塁でエンゼルスの大谷翔平が代打出場したものの、敬遠気味に歩かされた。ドジャースが6点もリードしていたにもかかわらず、である。試合後、マドン監督はボソッと「もう、誰もまともに勝負してこない」とつぶやいた。 7月25日、エンゼルス1点リードの8回2死三塁でその前の打席で勝ち越し本塁打を放っていた大谷を迎えたツインズは、敬遠を選択。このとき、敵地のファンがブーイングで異を唱えたが、マドン監督は、「正しい判断だろう。私でもそうする」とツインズベンチをかばっている。 8月6日のドジャース戦でも、延長10回表、エンゼルスが1点を勝ち越し、なおも無死2塁で大谷が代打出場したが、バットを振らせてもらえなかった。ロサンゼルスのファンもやはりブーイングで反発したが、これも当然だろう。 さすがにドジャースが6点をリードしていた8日のゲームでの申告敬遠はあり得なかったが、5球目のスライダーがうっかり甘く入った。ファールになったものの、ホームランでも打たれていたら、勝敗には影響がなくても、あの日がメジャー初登板だったジャスティン・ブルールは試合後、マイナーに逆戻りだったかもしれない。 もっとも、そうして相手が勝負を避けているのは、接戦や走者が塁上にいるときに限った話ではない。後半に入ってから相手投手は際どいところを攻め、大谷が手を出しても長打にはならず、ボールになって歩かせても構わないーーそういう攻めを徹底している。 前後半でどれだけ相手バッテリーの攻めが変わったのか。右投手の投げたコースで比較してみた。 まずは添付した次のページの図を参考にしてもらいたい。 赤ければ赤いほど、頻度が高いということになるが、前半はストライクゾーンの6割程度が赤いものの、後半は外角の1カ所だけがピンポイントで赤くなっている。ここに真っすぐ(25.5%)とチェンジアップ(25.1%)を軸に配球するのが一つのパターン。 ボール1個分外れている程度なら、主審も手を挙げる確率が高いので、厄介だ。 ただ、決して苦手なコースではない。通算でも3割以上を打っている。しかし、だからといってゾーンを広げるのはリスクがある。大谷自身、そこは明確に線を引く。 「甘い球を待っていると、今の状況では、特に浅いカウントとかは、ボールでもいいぐらいの感じでカウントを取りに来る場面が多くなるので、無理にそこに手を出す必要はない」 もちろん、振らないという選択肢にもリスクはある。結果として2ストライクに追い込まれるケースが増え、大谷も「多少、三振は増える」と覚悟している。後半に入り、四球率が前半の11%から16.5%に増えているのが必然なら、三振率も28.6%から38.8%に増えていることもまた、必然であり、大谷の言葉を裏付ける。