なぜ“投手”大谷翔平は進化したのか…制球力安定の裏にある「ショートアームアクション」と「ハイコックポジション」
「今日は特に乾燥していたので、テイクバックを大きく取ってしまうとなかなか制球できなかった。日本にいた時よりボールも滑るので、その分、テイクバックを変える必要もある。投球のバランスを早めにタイミング取ってという、ピッチングもそういう感じにならないといけない」 もっともショートアームアクションが、メジャーで主流となりつつある理由は、それだけが理由ではない。慣性モーメントが小さくなるので故障予防になり、腕を振るスピードを上げられるといったメリットもあるという。そうしたメカニックの微調整は、大谷が2018年10月にトミー・ジョン手術(側副靱帯再建術)を受けた後、リハビリ過程で意識した“ハイコックポジション”の延長線上にある。 ハイコックポジションとは、踏み出した足が地面に着地する寸前にボールを持った手が投球する腕の肘の位置よりも上にあること。その場合、体幹の加速に対して腕の加速のタイミングの遅れがないため、肩肘の負担が小さく障害リスクが低くなる。 当時、リハビリを見守ったエンゼルスのミッキー・キャラウェイ元投手コーチも、「その位置にないと、投げるときに上半身が回転を始めたとき、腕が遅れてその腕にストレスがかかる」と説明した。 テイクバックがコンパクトになれば、ボールを持った手は、自然に肘よりも高い位置に来る。 さて、こうした経緯により、現在地にたどり着いた大谷だが、「まだまだ」と納得していない。 「個人的にはまだまだリハビリ中。100(%)のうちの上の方にいると思いますけど、体的にも上にいけるんじゃないかなと思ってる。リカバリーも含めてまだまだ改善するところは多い。もっともっと気をつけて体調管理をしていく必要がある」 そう言えば、「肘の状態も良くなって、スライダーもここにきて球速が多少上がってきた」と話したのも8月に入ってから。大谷は投手として一つのスタイルを掴んだかに見えるが、パフォーマンス向上と故障予防という2つを両立させながらの理想は、“まだまだ”先にあるようだ。次回登板は25日(日本時間26日)のオリオールズ戦に予定されている。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)