独り言は脳に良い?悪い? 脳科学者が解説する意外な効果
周りも嬉しくなる独り言
基本的に独り言は自分に対して言うものですが、独り言を発するのは、ひとりのときとは限りません。独り言を聞いた周囲の人も笑顔になれたら、それが一番いいですよね。 部下からの提出物や家族からのプレゼントなどを見るときは、「さすがだな」「すごい」などと素直につぶやくと◎。自分を含め、その場にいる全員の気持ちが明るくなり、次の行動へのモチベーションにつながります。
脳に悪い独り言
過去を悔いたり、未来を無駄に心配したりするような独り言は、脳を疲弊させてしまいます。意識して控えるようにしましょう。 \ツイてなかった/ 「自分自身の力では、どうすることもできなかった」と脳に認識させて、その結果、自己効力感を下げてしまう言葉です。うまくいかなかったのが本当に偶然であったとしても、わざわざ口に出す必要はないでしょう。 \ごめんなさい/ これは厳密には独り言ではありませんが、あえて言わせてください。何かあるたびに「ごめんなさい」とつぶやいてしまうのは、必要以上に脳が自分を責めてしまうため、おすすめできません。たとえば「何から何までしてもらって、ごめんなさい」なら、「全部やってくれて、ありがとう」に変換を。 \また、やってしまった/ 過去は変えられないもの。過去を振り返り、後悔を重ねるような台詞は、脳に悪影響を与えます。何かに失敗したときは、あくまで現状を整理するための独り言にとどめ、「また」などと過去の失敗まで振り返らないようにしましょう。大切なのは、過去よりも「今」です。 \悪いことが起こったらどうしよう/ 今ある感情や、具体的な悩みを口に出すのはOKですが、まだ先の未来を悪いほうに予測し、不安を口に出すのは、脳を混乱させるだけ。考えたところでどうにもならないうえに、その言葉が現実になる可能性を高めるからです。未来のことを口に出すときは、ポジティブな内容に限定してください。
独り言を味方につけて人生を楽しもう
脳は「自分の内面と向き合っているとき」に成長すると考えられています。自分と向き合うと言っても、難しいことをする必要はありません。ひとりでボーッとしている時間で、無意識に脳が自分と向き合い、自分に関する情報を整理・処理しているからです。 実際、ひとりで入浴や散歩をしているときにパッとアイデアを思いつくことは、よくあります。ひとり=孤独、さらに「孤独は悪いもの」と捉えている人もいますが、脳の働きから見たら、孤独こそチャンスなのです。寂しさを感じたときは、独り言をつぶやいてみてはいかがでしょうか。素敵なひらめきが生まれるかもしれません。 また、私たちは日々、大量の情報にさらされています。パソコンで調べものをしたりテレビを観たりするのはもちろん、何もしなくてもSNSやメールなどの通知が昼夜問わず来る現代社会において、脳が疲弊している人が増えているのも事実です。脳の疲れやネガティブ感情をためこまないためにも、独り言と上手につきあって、人生をより豊かにしていきましょう。 【毛内拡(もうない・ひろむ)】 東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。理化学研究所脳科学総合研究センター研究員などを経て、2018年よりお茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教に。脳神経生理学と生物物理学を研究する傍ら、脳についての知見を動画や書籍などで発信している。『面白くて眠れなくなる脳科学』(PHP研究所)など著書多数。
毛内拡(脳神経科学者)