独り言は脳に良い?悪い? 脳科学者が解説する意外な効果
ひとりのとき、思わず出てしまう独り言。脳神経科学者の毛内拡さんは、独り言は脳に良い影響を与えると語ります。『PHPスペシャル』より、毎日を快適に過ごすために、独り言との上手なつきあい方について、ご紹介します。(取材・文:加曽利智子) 【心が軽くなる言葉】人間関係が良くなる8か条 ※本稿は、『PHPスペシャル』2024年12月号より内容を抜粋・編集したものです。
独り言を発するのは人間だけ!?
嬉しくて思わずひとりで「よかった!」と声を上げたり、忙しすぎて誰もいないところで「疲れた~」とつぶやいたり......。みなさんにも、そんな経験があるのではないでしょうか。 じつは、聞いてくれる相手がいない状況にも関わらずひとりで声を出す生物は、人間の他に、あまり見られません。生物が声を出すのは、自分の縄張りを周囲にアピールする、メスへ求愛するなど、コミュニケーションが目的であることがほとんどなのです。 人間は、他人とコミュニケーションをとるためだけでなく、心のモヤモヤを解消したり思考を整理したりするためにも、言葉を発します。 たとえばイライラしたときに、「わー!」と大声を出すだけで、気持ちがスッキリすることもありますよね。この記事では、そんな人間ならではの言葉とも言える「独り言」が、私たちにどのような影響をもたらすのか、探っていきたいと思います。
脳は「音」で状況を把握する
まずは、脳の特性から説明しましょう。 脳は報酬(※快感をもたらす刺激)を求める器官です。基本的には行動し続けることで、次から次へと報酬を生み出そうとします。 一方で、目や耳から仕入れた情報をもとに自分の状況を把握し、行動を制御しているという特性もあります。つまり、人が何らかの行動を終わらせるためには、それが完了したことを音声などで脳に伝え、これ以上同じ行動を続けないように仕向ける必要があるのです。 たとえば、目標を達成して「やったー!」と独り言を発したとします。すると脳は、期待していた場所に自分が到達したことを認識し、そこでようやく「今までの行動は完了した。次に進もう」と、行動を切り替えられるのです。 独り言には、他にも多くの効果があります。ひとりで過ごす時間を上手に使って、脳をコントロールしていきましょう。