パンダが双子を生む確率は「約45%」って知ってた?アドベンチャーワールド副園長に聞いた「もっと知りたいパンダのこと」…日中共同繁殖研究「3つの成果」そして中国へと渡ったパンダファミリーのいま
2024年12月1日に和歌山・アドベンチャーワールドにて開催された、「ジャイアントパンダ日中共同繁殖研究30周年記念シンポジウム」。研究のパートナーである中国動物園協会および成都ジャイアントパンダ繁育研究基地の代表者や関係者のほか、事前に申し込みをした一般参加者約150名が参加しました。 【写真】パンダファミリーの秘蔵写真満載!イベントフォトレポートはこちら 日本と中国が30年にわたって協力して進めてきた、ジャイアントパンダ繁殖研究の成果を振り返るイベントについてご紹介します。
パンダが和歌山に来た理由
シンポジウムでは、はじめに30年の歴史を振り返る記念映像が上映された後、アドベンチャーワールド副園長 中尾 建子さんの「日中共同繁殖研究の成果」をテーマとした講演が行われました。 まずは気になる、アドベンチャーワールドにジャイアントパンダ(以下、パンダ)が来た理由。それは、1984年の和歌山県と中国山東省の友好県省関係締結がきっかけでした。 その後、1987年には、同パークと山東省済南市にある金牛公園済南動物園が友好提携を締結。動物交換や人材交流なども積極的に行われました。 そして、日中平和友好条約締結と同パークの開園10周年を迎えた1988年、四川省成都動物園より「辰辰(Chen Chen)」と「慶慶(Qing Qing)」という2頭のパンダを3か月間借り受けることができました。 当時、日本でパンダを見ることができたのは、東京の恩賜上野動物園だけ。貴重な動物であるパンダを見てもらうことで、絶滅の恐れがある動物たちについての理解を求める保護啓発活動を行ったのです。 その実績もあり、1994年には永明(えいめい)と蓉浜(ようひん)というつがいのパンダが来園。世界初となる長期国際共同繁殖研究が始まりました。ちなみに蓉浜は、先にやってきた慶慶の妹でした。
共同繁殖研究3つの成果
共同繁殖研究の成果について、中尾副園長は「12回の出産と17頭の育成。飼育管理の技術向上、そしてパンダから広がる交流や活動」をあげました。 中尾さんは獣医師として、これまですべてのパンダの出産に関わってきました。さらに、永明と蓉浜の来園当初から飼育管理に携わり、献身的にお世話をされてきた人でもあります。 その中で、6月から9月頃に出産することが多いパンダの飼育下で初めての冬季出産にもふれ、2001年12月の雄浜(ゆうひん)の誕生について「季節外のメスの発情に対し、同調できるオスの存在は大きかった」と話します。このオスとは永明のことです。 メスの発情期間は2、3日と短いため、発情時期の見極めが大切となります。でも永明は、飼育スタッフよりも早く、メスの発情に気づき、ソワソワしていたというのですから驚きです。 ほかにも、飼育管理の技術向上として、1990年に成都で初めて成功した、ふたごの入れ替え飼育「Twins swapping(ツイン スワッピング)」にふれ、「このときの母親が、1988年に来園した慶慶なんです」と話してくれました。 2003年には同パークで、飼育下では初めてとなる、ふたごの同時育成にも成功。蓉浜亡きあとに来園した梅梅(めいめい)は、とても母性の強いパンダ。3回目の出産にして初のふたご・秋浜(しゅうひん)と隆浜(りゅうひん)を生みましたが、飼育スタッフの力を借りながら、2頭とも自力で育て上げました。これには、飼育経験が豊富な中国人スタッフもビックリしていたそうです。