利用率1割の産後ケア 自治体間で差「自分にお金かけられぬ」心理も
産後1カ月までの女性の10人に1人が、「産後うつ」のリスクが高い状態にある――。そんなデータが、こども家庭庁の2022年度の調査結果にある。心身のケアや育児支援を通じて出産後の母親が健やかでいられるようにする「産後ケア」の事業が市町村の努力義務となり、多くの自治体で導入が進んでいるが、利用率はまだ1割程度にとどまっている。 【写真】「頑張ってるね」声かけに涙 産後ケア、助産師らの支え 同庁によると23年度、全国の約89%にあたる1547市町村が事業を実施している。 産後ケアのメニューでは、具体的に何をしてもらえるのか。 子どもを一時的に預けてのんびりしたり、温かい食事やマッサージを提供してもらえたりするほか、授乳や子育てについて助産師などに相談することもできる。市町村が受託する施設に母親が泊まりがけや日帰りで通ったり、助産師らが家を訪問したりする。 利用率は、21年度の6.1%から上昇したものの、22年度でもわずか10.9%だ。 利用料や、利用できる期間は、住んでいる自治体によりばらつきがある。 福岡県の場合、高額なところは宿泊型で1万8千円(県内平均4800円)、日帰り型で4千円(同1700円)、訪問型で3千円(同1100円)が必要だ(24年8月時点)。一方で、すべて無料でケアを受けられる自治体もある。 「7回まで」などと利用上限が決まっているところもあれば、子どもが1歳になるまで「何度でも」というところもある。 一方で、助産師らの人材不足の地域ではケアを受ける施設が地元になく、車で足をのばさなくてはいけないところもある。 産婦人科医で病児保育や産後ケアの支援事業を手がける株式会社グッドバトン代表取締役の園田正樹さんは、現状について、産後ケアの認知度がそもそも低いことに加えて、利用の申し込みのために役所へ足を運ぶ必要があるなどの手間や、子どもではなく自分のためにお金を使うことの心理的なハードルがあると指摘する。(大下美倫)
朝日新聞社