関学が日大に快勝した甲子園ボウル…反則タックル問題の辛い過去を乗り越えた両チームが示した素晴らしい現在と未来
アメリカンフットボールの東西大学王座決定戦「第75回甲子園ボウル」が13日、阪神甲子園球場で行われ、関西代表の関西学院大学が42-24で関東代表の日本大学に快勝した。最優秀選手には関学大のRB三宅昂輝が選ばれ、年間最優秀選手に与えられるチャックミルズ杯は関学大QBの奥野耕世が2年ぶり2度目の受賞。奥野は2年前に社会問題となった日大の反則タックル事件の被害者となったQB。日大も反則タックルを指示した首脳陣を一新、公募で新監督を決めて1年以上の停止処分を経て実質2部リーグにあたる1部の「ビッグ8」から出直して甲子園に戻ってきた。それぞれの思いを抱き3年ぶりに邂逅した東西の強豪ライバル校。日大QBの林大希は右肩靭帯断裂の大けがをおしての強行出場だった。
日大QB林は右肩靭帯断裂で強行出場
奇跡のパスは通らなかった。 21―35と2本のタッチダウン差をつけられて迎えた第4クオーターだった。自陣26ヤード付近から、日大のQBの林大希がエンドゾーンへ走るWRの林裕嗣へ起死回生のタッチダウンパスを放った。大きなアーチを描いたそのパスは、この日、一番のロングパスだったが、無情にも、林が伸ばした手からこぼれた。 「一番信頼して、一番上手なレシーバー。取ってくれと願って投げた。あの距離のパスを投げられたのは奇跡だと思う」 林の肩の靭帯は断裂していた。甲子園ボウル出場を決めた11月29日の桜美林大戦で痛めて途中退場したが、肩鎖関節の靱帯断裂と診断され、この2週間、一度もボールを投げることができなかった。それでも日大の全叡智を結集して、ありとあらゆる治療を試みて、この日は痛み止めの注射を打ち、「肩の感覚がないまま」の状況でフィールドに立った。 「右腕が使えなくなっても出場する気だった。出してくれた仲間にも感謝したいです」 起用を決断したのは、3年前、反則タックル問題で公募に立候補して監督就任した元立命大のオフェンスコーチだった橋詰監督。「(公募で3年前に来た僕が)フェニックスの伝統について語れる立場でないが、僕が知る限りフェニックスのエースは10番をつける」 新調のユニホームの「10」番を林に渡した。 「最終的に決めたのは僕。いけるところまでいこうと。この試合のために2週間、準備したことがある、それを林の調子で変えるのは違うなと。肩を気遣うのはなしにしようと思ったが、なんで投げれるんやろう?と思った」