関学が日大に快勝した甲子園ボウル…反則タックル問題の辛い過去を乗り越えた両チームが示した素晴らしい現在と未来
関学の大村監督は「力関係でいくと林が元気に出てきたら五分五分と思っていた。そうであればチームの自力で左右する。持っている力を出させることが大事で、そこをどうするかを考えていた。そういう意味でホッとしている」と言い、日大の橋詰監督も「オフェンス、ディフェンスともに完敗。関学さんが上回っていた。結果が変わったかどうかわからないが、できれば林をベストな状況で試合をさせてやりたかった」と完敗を認めた。 優秀選手賞に選ばれた奥野は、その2年前の反則タックル問題の被害者だった。 「あの試合以降、日大と試合できていなかった。それを甲子園という舞台で勝負できたのはうれしく思っています。お互い本気でぶつかって、いい試合できたんじゃないかなと」 2018年5月の反則タックル問題に巻き込まれた2年生は、被害者でありながらマスコミに追いかけまわされ、人生を狂わされかけた。 「あのとき僕一人だけでは精神的にきつかった。先輩方やいろんな方に支えられてアメフトを続けられた。あのとき応援してくれた人に日大と元気な姿で試合することが、ある意味恩返しになったのかなと思う」 奥野は、言葉を選びながら、こう語った。 反則タックルで受けた怪我が酷ければ選手生命さえ絶たれていたかもしれなかった2年生は、2年後の今、オフェンスの立派なリーダーとしてチームを勝利に導いた。 前日のミーティングでは、レシーバーの鈴木海斗ら4年が中心になって、「奥野を日本一のQBにしたい」との声が上がった。 「奥野が引っ張ってくれたおかげ。頼もしい存在だった」 奥野もまたあの事件を糧に大きくなった。 奥野は、この日、パスで320ヤードをマークした。大村監督が「勝負どころで、奥野と鈴木のホットラインが機能した」と振り返った2人で96ヤードを稼いでいる。 昨季限りで勇退した鳥内前監督の下でヘッドコーチとしてチームを支えてきた大村監督は、危険タックル問題について振り回された側だ。だが、この試合に因縁を持ち込まなかったという。 「危険タックルのことは選手も気にしていない。済んだ話。我々にしてみれば、それほど関係ない。関学対日大。青と赤。青のジャージを着て赤には負けられないとやってきた」