反則タックル出場停止処分を経て2年ぶり公式戦で圧勝再出発した日大アメフット部の何がどう変わったか?
アメリカンフットボールの関東大学1部下位リーグ「ビッグ8」の開幕2試合が7日、調布市の味の素スタジアム・AGFフィールドで行われ、関学QBへの反則タックル問題で出場停止処分を受け下位リーグに降格した日大が青学大に89-0で圧勝した。日大は、昨年1月のライスボウル以来、1年8か月ぶりとなる公式戦。反則タックル指示問題で辞任した内田正人監督の後に公募で新監督に就任した橋詰功氏の下、選手の自主性を重んじたチーム改革に取り組んできた“新生フェニックス”は、攻守に高いレベルを示し再出発を果たした。今季の目標は「ビッグ8」の優勝とチャレンジマッチ(入れ替え戦)に勝って「トップ8」(1部上位リーグ)復帰を果たすこと。だが、主将のOL贄田時矢(4年)は「我々の目標は来年の日本一」と宣言した。また反則タックルの傷害容疑で書類送検されているDL宮川泰介(4年)は、ベンチ入りしたが、まだ検察の最終判断が下っていないため大学の方針で出場を自粛した。
選手同士が明るく声掛け
新生フェニックスの実力をまざまざと見せつけた。 開始早々、RB宋旻宰の23ヤードのランプレーで最初のタッチダウンを奪うと、第1Qだけで20点を刻み、次から次へと得点を重ねた。圧巻だったのは「やったことのない独走タッチダウンを目標に掲げていた」というエースQB、林大希(3年)の独走劇。第3Qに自らボールをキープするオプションプレーから青学ディフェンスのブランクを突くと一気に77ヤードを突っ走った。終わってみれば12タッチダウンを奪い89-0の大勝。ほとんど自陣に攻め込まれることなく「ビッグ8」に昇格してきたばかりの青学を寄せ付けなかった。 ほぼ満員のスタンドは余りの強さに声を失ったほどだった。 「チームがどうなるか分からない状況からスタートした。公式戦で勝ちを得られたことをすべての人に感謝したい」 反則タックル問題の大騒動の末、昨夏に公募で新監督に就任した元立命大コーチの橋詰氏は、どこか、ほっとした表情だった。 1年時に甲子園ボウルで優勝、ミルズ杯の栄誉に輝いたQBの林も「嬉しさと楽しさは人一倍あった。悔しさもこの試合にぶつけた」とアメフットのできる喜びを噛みしめていた。 彼が語った「悔しさ」とは、一連の不祥事で、関東学生連盟から昨秋、リーグ戦への出場停止のペナルティを受けて、アメフットができなかった空白の時間だ。 「昨年周りが試合をしているのを見ながらアメフトのできない環境が凄く悔しかった、王者でありながら次(のシーズン)に試合ができなかった。それは悔しかった」 チームからスキンヘッドの選手は一人もいなくなった。 サイドラインには、“内田前監督体制”の時にあったピリピリした緊迫したムードはなく、選手同士が明るく声を出す。 「選手同士の声掛けが多くなった。今までは(内田前)監督と話をすることはなかったが、今は監督ともオフェンスのプレーについて話もする。勝つためにどうすればいか、という考えがいっぱい出てきた。自主性の成果が出た」(QBの林)。第4Q前のクオータータイムには全員で揃って雄叫びを上げる儀式を行った。