宇宙飛行士・野口聡一さんが帰国会見(全文1)宇宙よりむしろ地上のほうが大変
プロの宇宙飛行士が乗らなくても可能か
林:すいません、ライターの林です。宇宙の民営化についてお聞きしたいんですけれども、野口さんが乗って帰られたクルードラゴンのレジリエンス号が今年の秋に民間人4人だけで宇宙飛行されると発表されていますが、プロの宇宙飛行士が乗らなくても可能だと思われますでしょうか。7月に宇宙旅行も始まる予定ですが、そういった宇宙旅行自体の期待も教えてください。 野口:ありがとうございます。まさにこのSpaceXの成功、運用初号機の成功がもたらしたものっていうのがこの宇宙旅行時代だと思うんですよね。従来の宇宙船もそれは可能だったんですけど、やはり宇宙船の自動操縦部分っていうのが非常に大きくなってるっていうのがこのSpaceXの特徴で。われわれも当然ながらこのSpaceXの操縦に関してはいろいろと、マニュアルに切り替えたときの操縦方法であったり、自動操縦がうまくいっているかを確認する作業っていうんで、そういうようないろんなプロとしての視点で今回のこのSpaceX、クルードラゴンを見守ってきましたけれども。SpaceXとしてはそこを次にもう一歩進めて、ほぼほぼ全自動で運用できるように。その1つの形として、もうプロの宇宙飛行士が乗らないというのが、まさに新しい時代に入ったかなという気はします。 今、お話にあったようにわれわれが乗った宇宙船はもう宇宙観光旅行用っていうことで、巨大な天窓を付けて、宇宙ステーションにドッキングしない代わりにそこを大きなドーム状のガラスで覆って、写真が撮れるというのは本当にセールスポイントですよね。そういうところをするところがやはりSpaceXのすごいところだなとは思いますけれども。
経験者なしでも乗り切れると僕は思うので
で、乗る乗組員も全員訓練は受けますけども、職業宇宙飛行士ではないと。これは私が普通の宇宙観光客であったら、やはりプロというよりは経験者が1人はいてくれたほうがいいだろうなっていうのは間違いなく思います。ただし、そこは経験者なしでも乗り切れるかっていうと乗り切れると僕は思うので。 そういう意味では経験者が誰もいないフライトっていうのは本当に久しぶりなんですよね。人類の、有人宇宙飛行、歴史の中でも。当然、ガガーリンさんは、初飛行の人はまったく経験なかったわけですけども、そのあとっていうのは必ず、必ず経験者と新人をうまく組んで、そこで技術の伝承ができるようにっていうのをずっとやってきたんですけども、今回このミッションがうまくいくことを本当に僕は期待してますけども。 一方で、そのあとの同じSpaceXの民間人飛行の場合にはNASAを退役された、元プロの宇宙飛行士が1人付いて、ほかの人たちの、宇宙観光客の面倒を見るっていうとちょっと言い方が良くないですけども、やはり経験者としてそこをサポートしていくっていうスタイルがそのあと何回か続きますので。そちらのほうがおそらくスムーズな運用、日々の宇宙での生活がスムーズにいくっていう話と、何か異常事態があったときに、SpaceXの運用であっても何かあった場合にはマニュアルにどんどん落としていって、深い知識を持った人間が対応できることで危機を乗り越えられるようにはできているので。そういうことを考えると、プロというか経験者が乗っているっていうのは大きな安心に、危機回避、安全管理の面ではプラスだと思うので。 私ももしかしたらそういう仕事に今後就く可能性もありますから、宇宙の民営化、それから宇宙観光旅行時代に向けて、経験者として関わっていくっていうのは大いにありうるかなと思っています。 林:ありがとうございます。 野口:ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。それでは次の方、いかがでしょうか。では手前の方、どうぞお願いいたします。 【書き起こし】宇宙飛行士・野口聡一さんが帰国会見 全文2に続く