数十年に1度の「竹の一斉開花」は、大規模な飢饉を引き起こす
1911年、インド北東部のミゾラム州とその周辺地域が飢饉に見舞われた。48年後、再び同じことが起こった。そして2007年にまたしても飢饉が発生したとき、もはやそれが単なる偶然ではないことは明らかだった。 ミゾラム州政府の記録によれば、1815年以降、この地域は2世紀以上にわたり、およそ50年周期で飢饉に見舞われている。現地住民のあいだには、この周期的現象を指す単語さえあり、「マウタム(mautam)」と呼ばれている。 すべての始まりは、竹の花である。 竹と聞いて、ほとんどの人は見上げるほど高い、樹木のような植物を想像するが、実は、竹はイネ科の「草」だ。竹の生活環は不思議で、神秘的でさえある。 竹の開花周期は、種によって異なる。2020年4月に学術誌Frontiers in Plant Scienceに掲載された論文によれば、3年から150年までさまざまだ。開花段階においては、同種の竹のすべての個体が同時に花を咲かせ、そこかしこに竹の花が爆発的に咲き乱れる、幻想的な景色が広がる。 しかし、これから見ていくように、この一斉開花こそがインド北東部で周期的飢饉を引き起こす主要因なのだ。 しかも、これはミゾラム州だけの特殊な現象ではない。香港から南米まで、竹の一斉開花は恐るべき「ネズミの洪水」の前兆であり、甚大な作物被害、経済の混乱、飢饉を伴う。 ■竹の花がインド北東部で大惨事を引き起こすメカニズム 竹の一斉開花は、圧巻だがまれな現象である。ミゾラム州に広く分布するMelocanna bacciferaという種は、現地では「マウトゥク(mautuk)」と呼ばれ、48~50年に一度花を咲かせる(一斉開花現象の名前「マウタム」は、このマウトゥクという名称に由来する)。花が咲いた後、無数の竹は一斉に膨大な量の種子をつける。 栄養豊富なこの種子は、この地域に生息するクマネズミにとって願ってもないごちそうだ。大量供給される竹の種子のおかげでネズミは猛スピードで繁殖し、その数は常軌を逸したレベルに達する。