「急速な円安の進行は経済にマイナス」日銀・黒田総裁会見6月17日(全文1)
為替の動向を注視する理由は
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。先ほどから総裁のお答えの中でも何度か出て来ている文言で、今回の公表文のリスク要因のところで、金融・為替市場の動向を十分注視する必要があるという、この為替という文言を盛り込んでいます。これは日銀としても為替の動向を注視するというスタンスを明確にされたということだと思うんですけれども、注視した上でどうなさるのかという部分が気になります。為替の動向を今後、金融政策を決める際に判断材料に加えるということなのでしょうか。 そしてもう1点なんですけれども、先日アメリカはFOMCで政策金利を0.75%引き上げました。アメリカは景気後退リスクを負いながらのインフレ抑制をしていくということになるのかもしれませんけれども、それでもアメリカが早期に、またしっかり目にインフレを抑えるということが日本経済、それから日本の金融政策の行方にとっても重要だと考えていらっしゃるでしょうか。お願いします。 黒田:為替につきましては、従来から申し上げているとおり、経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということでありまして、過去数週間、やや急速な為替の変動が起こったということで、これは好ましくないということをはっきり申し上げるとともに、そういった為替の動き、これが経済や物価に与える影響について十分注視していく必要があるということでございます。
米国の経済・物価情勢を注視したい
ただ、どこの国の金融政策もそうですけれども、為替レートをターゲットにして金融政策を運営してるというところはないわけでして、あくまでも金融政策は物価の安定ということであります。特にご承知のように、日銀法でも非常に明確に金融政策の運営に当たっては、物価の安定を通じて経済の健全な発展に資するようにするということがうたわれておりますので、当然のことながら従来から申し上げているように経済が持続的な成長経路に乗って労働市場がタイトになり、賃金が上昇して、賃金の上昇と物価の上昇とが進むことによって2%の物価安定の目標を安定的に達成するということが目標でありますので、あくまでもそういった観点から金融政策を打って、運営してまいりますけども、為替が経済や物価にさまざまな影響を与えることは事実ですので、その動向についてはやはり十分注視していく必要があるということだと思います。 それから、FRBにつきましてはご指摘のように、最近のFOMCで政策金利を0.75%引き上げるということを決定されたわけでして、パウエル議長自身が労働市場が非常に強くて、消費者物価上昇率が高めに推移している、ご承知のように8.6%という非常に高い水準で推移していることを指摘しまして、また先行きについても継続的な利上げが適切という考え方を示しておられます。 日本銀行としては米国の経済・物価情勢や、その下でのFRBの金融政策運営、さらにはその世界経済への影響についてはもちろん注視してまいりますけれども、FOMC参加者の先行きの経済見通しでも、インフレ率が引き上げられ、実質成長率は引き下げられたわけですけれども、そういった意味で不確実性が高まっているということはパウエル議長も指摘されておられますけども、やはりソフトランディングを実現するパスは可能であるというふうに述べておられまして、いずれにせよ米国の経済・物価情勢というのは、世界の経済物価情勢に影響を与えますので、引き続き注視してまいりたいというふうに考えております。