「急速な円安の進行は経済にマイナス」日銀・黒田総裁会見6月17日(全文1)
急な為替変動は企業心理に悪影響を与えているか
ロイター:ロイター通信の木原です。2問お願いします。1問目は最近の急激な為替の変動、企業や家計の心理に悪影響を及ぼしうると思うんですが、すでにそうした悪影響が及んでいるのか、また、そうした動きによって経済が悪化してしまった場合は、現行の緩和政策を維持するだけではなく、緩和の強化ということになるのかどうか、そういう措置を取るとまたさらに円安が進んでしまうというデメリットもあると思うんですが、そこをどう考えていらっしゃるのかが1問目です。 また、ちょっとこれ、確認なんですけれども、10年金利ターゲットの上下0.25%に収めると、この0.25%の金利よりも高い金利水準、あるいはこの金利ターゲットの上限、今、0.25、これを上に引き上げるというような、要は市場でいわれているレンジの拡大というのは、これは利上げ、金融引き締めと同等であるという理解でよろしいでしょうか。 黒田:まず、為替の問題につきましては、先ほど来、申し上げてるように、具体的な水準とかそういうことについてコメントすることは差し控えたいと思いますけども、過去数週間に起こったような急速な為替の変動というのは、企業の計画策定に関して、大きな不確実性をもたらすということで好ましくないと、経済のマイナスになるというふうに考えております。
日本経済は全体として回復途上にある
そういった意味で、具体的にそれが今、例えば設備投資等に影響が出てるかと言われると、今のところは、ご承知のように企業収益は高水準で推移しておりますし、設備投資も一部に弱さは見られますけれども、全体としてはかなりしっかりした動きをしておりますので、今のところ直ちに為替の変動が企業の心理とかそういうものに大きな影響を与えたっていうことではないかもしれませんが、やはりさまざまな経済界の人も言っておられるように、急激な為替の変動というのはやはり好ましくないということは、まったくそのとおりであると思っております。 なお、今申し上げたように、それから最初に申し上げたとおり、日本経済は全体として回復途上にあり、そういう中でしっかりとそれを支えていくっていう必要が金融政策にあると思います。また仮に、さらに必要があれば、先ほど申し上げたようにちゅうちょなく金融のさらなる緩和をする用意があるということでありますが、今のところ、先ほど来、申し上げているように日本経済は内外のいろいろな状況を反映して一部弱めの動きも残ってますけども、他方でやはり感染症の影響が和らぎ、消費が回復しつつあり、それから設備投資も先ほど来申し上げているように、高水準の企業収益を反映してかなりしっかりした動きをしておりますので、今の時点で何か、さらなる金融緩和をしなければいけないっていうことではないと思いますけども、必要があれば当然そういったことも行うということであります。 それから、もう1つのお話は、プラスマイナス0.25%のレンジというのは、これは昨年3月の点検で長期金利の変動が一定の範囲内、具体的には上下にプラスマイナス0.25%程度であれば、金融緩和効果を損なわず市場の機能度にプラスに作用するということを定量的に確認したことを踏まえた措置でありまして、先ほど来、申し上げたとおり、さまざまなオペ、その他でこうした調整方針と整合的なレンジ内で推移しておりますけれども、このところ欧米金利の動きに起因する金利上昇圧力が掛かる中で、変動幅の上限に近い水準が続いております。 こうした状況で仮に変動幅の上限を引き上げれば、長期金利は0.25%を超えて上昇すると予想され、金融緩和効果は弱まると考えられますので、そういったことは、そういうことをやろうとは考えておりません