親の介護で子供の自由が奪われる日本 帰省で介護も スウェーデンでは同居自体がまれ、「家族介護」は自由意思で
スウェーデンでも「家族介護」のあり方が話題に
スウェーデンでも、この10年で「家族介護」が大きな話題となっています。高齢者がこれまでになく長生きしていることがその大きな理由です。急激な高齢化により、公共の高齢者ケアが十分に行き届かなくなり、約5人に1人が家族や親しい人の介護を行っています。 家族が食事や排せつの介助まですることはほとんどありませんが、一人暮らしの親の受診の付き添いや介護支援の会議に参加することなどは家族にとって大きな負担です。子どもが仕事を辞めて親の介護をするようなこともないですが、多くの場合、女性が親の介護を行うため、男女ともに平等に働くことを掲げている社会にとって、この点も大きな問題です。 スウェーデン政府は家族の負担を減らすために、2020年に戦略書をまとめました。それには、家族支援は地域や個人により不平等が生じているので、家族のニーズに応じた支援を提供することが重要と強調されています。 アジアからの移民家族は、文化的背景から親と同居するケースがあります。一方、スウェーデン人は子供と親が同居することはほとんどありません。たとえ90歳を超える親の体調が悪く、介護が必要でも、子供と親が同居することはほとんどありません。 それは、在宅での介護サポートが充実しているからです。スウェーデン厚生省の調べでは、在宅介護サポートは平均30時間/月で、私が見た事例の中で最も多いものは、1日8回の訪問介護と3回の訪問看護でした。患者さんに認知症はなく、どんなに大変なことがあっても自宅で生活することを希望しました。毎月転倒して入院してきましたが、家族が世話をすることはありませんでした。
高齢者介護は市町村の責任 「家族介護」はあくまで自由意思
以前にも紹介したように、スウェーデンの「社会福祉法」には、「高齢者介護・保護は社会福祉を担う市町村の責任で行われる」とあり、親を介護する義務はありません。 スウェーデンでの家族介護は、あくまでも「自由意志による」支援です。介護をしたくないのにする、ということはありません。なぜなら、スウェーデン人は、自分の意見を持ち、互いの価値観を尊重することを何よりも大事にしているからです。自分の意見を持つ訓練は、保育園の時から始まります。