球界大御所が「ヤクルト日本一」で出てきたセパ格差の解消論をぶった斬る…「それ以前のレベルだ」
広岡氏が指摘したのは、延長12回に二死から塩見がレフト前ヒットで出塁、代打・川端の打席で、投手の吉田凌がカウント2-2から投じた外角低めにワンバウンドになるスライダーを捕手の伏見が止めることができず、三塁ベンチ前に大きく弾いて、難なく進塁を許して、川端の決勝タイムリーにつながった場面だ。野球に“たられば”は禁物だが、あのパスボールがなければ、塩見がホームに生還することもなかった。 「私は1勝3敗の時点でも山本、宮城を擁するオリックスが有利だと思っていた。それくらい投手陣に力の差があったからだ。山本は、際立っており、沢村賞投手にふさわしい気持ちの入った素晴らしいピッチングをしたが、肝心なところでミスをしてしまっては、その戦力を生かすこともできない。前年度最下位のチーム同士の日本シリーズになったことが注目されていたが、こういう隙だらけのところが、前年度最下位のチームの弱さ、まだ教育の足りないところなのだ。これは両チームに言えるが、積み重ねた強さではない。また両チームの投打の外国人の差も、シリーズの明暗を分けたのだろう。このシリーズを見ただけで、セパの格差が埋まったのか、どうかを論じることはできない。もっと野球のレベルを上げなさいということだ」 球界の至宝とも言える山本、宮城の両投手を育てたオリックスに期待を寄せているからこそ広岡氏は、あえて辛口でぶった斬ったのだろう。 ただ、広岡氏はヤクルトの高津監督のチーム作りと采配力、ベテランの青木が中心となり、21歳の4番、村上らが溌剌と活躍できる一体感を築いたことを評価している。 「高津は苦労している。アメリカの野球も知り、独立リーグでも野球をやった。私は2軍監督で経験を積んだことも良かったと見ている。そういう指揮官として勉強、努力してきたことが、こういうシリーズでの采配、特に継投策に反映されている。高津がピッチャーのレベルを引き上げた。先発投手は全員がゲームを作った。また青木の存在感が際立っていた。彼のリーダーシップを見て村上らが思い切ってプレーでき、レギュラーシーズンの後半にチームに一体感が生まれていた。そのままシリーズも突っ走った」 第6戦では、スアレス、マクガフの2人を回跨ぎで3イニング登板させるなど、高津監督の異例の継投策が光った。また開幕を任された奥川から始まった先発投手が誰一人としてゲームを潰さなかった。第2戦では高橋奎がプロ初の完封勝利。第4戦は41歳の石川が6回を1失点(自責ゼロ)に抑えシリーズで2番目の年長記録となる勝利をマークした。