第163回芥川賞受賞会見(全文)高山羽根子さん「もうちょっと書かせていただける」
高山さんにとって富山はどういう土地か
中日新聞:幼少の頃の富山の思い出と、今だったら富山はまた見える景色が違うと思うんですが、高山さんにとって富山はどういう土地というか、どういう思いがある土地なのかなと。 高山:富山はやっぱり小さい頃に行き来していた田舎の親戚のおうちみたいな形で、田舎っていう言葉だと、私が住んでいたのが神奈川県の結構山のほうだったので、田舎っていうイメージで考えると考えられないぐらい、富山の親戚のうち、要はおじいちゃんとかおばあちゃんのうちは、本当に富山のど真ん中だったんですね。お城そのすぐそばで、だったので、あまり田舎に帰るというよりは、もうビルがいっぱいあるところに行く、みたいなイメージだったんです。 この前、去年、今年の頭ですね。美術館さんの前に文学館さんのほうでもお話をさせていただく機会があって、富山のほうに寄らせていただいたんですけれども、やっぱり景色がすごく変わっているところと、まったく変わらないところとがあって、やっぱり自分の中の記憶の場所と、座標が同じはずなのに、見える景色みたいなものが、要はGoogle マップみたいなのでいうと、座標の点は一緒なのに、ストリートビューみたいなものがまったく違うみたいな、ちょっと脳の中のバグじゃないですけど、ちょっとおかしい経験みたいな、白昼夢みたいな経験があって、そういったものも含めて、ちょっと今後は書きたいなと、そのとき思っていた矢先のことだったので、すごく残念というか、向こうで待ってくださった方もいらっしゃって、すごく申し訳ない感じになってしまったんですけれども、今後も、できればまたお伺いさせていただいて、お話聞かせていただいたり、させていただいたりしたいなと思っています。 中日新聞:すみません、ありがとうございます。 司会:じゃああと1問とさせてください。遠野さんのほうもお待ちいただいていますので。どうぞ、挙手で。じゃあすみません、じゃあ。