日銀・黒田総裁会見9月22日(全文1)感染症リスクの低下につれて消費も回復
2%の物価安定の目標の実現目指す
日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。 また、引き続き新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、それぞれ約12兆円および約1800億円の年間増加ペースの上限の下でのETFおよびJ-REITの買い入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。 その上で当面、感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
新型コロナが経済・物価に与える影響は
朝日新聞:ありがとうございます。幹事社から2問お尋ねします。緊急事態宣言が延長され、新型コロナウイルスの感染状況は7月の日銀の見通しより悪化しています。あらためてですが、感染拡大が経済・物価に与える影響をどうみていらっしゃいますか。また、これまでの経済見通しと何か変わる点がありましたがお聞かせください。 もう1つは中国です。中国の不動産大手、中国恒大集団が経営破綻のリスクにあると報道されています。現時点で金融市場上の、金融市場に与えるリスクについてどのように認識されていますでしょうか。 黒田:まず前段のご質問ですけども、感染力が強い、いわゆるデルタ株の急激な流行を背景にして、個人消費は飲食、宿泊等のサービス消費における下押し圧力が依然として強く、引き続き足踏み状態となっています。これは先ほど申し上げたとおりです。 もっとも、企業部門では輸出や生産の増加を受けて収益が改善し、それが設備投資の持ち直しにつながるという、いわゆる前向きの循環メカニズムが働いております。このため、景気の持ち直し基調は維持されていると考えています。 先行きは、感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、わが国経済は回復していくと考えています。ワクチンの接種率はすでに米欧並みに高まってきております。こうした下で、感染抑制と消費活動の両立がより容易になっていけば、個人消費はペントアップ需要にも支えられて、再び持ち直していく可能性が高いとみております。 この間、消費者物価の前年比は携帯電話通信料やエネルギー価格などの一時的な要因を除いた、いわば実力ベースで見ますと小幅のプラスで推移しております。経済活動の落ち込みの大きさに比べると、物価の基調は底堅く推移しているといえると思います。先行きにつきましても、消費者物価指数の基準改定の影響を除けば、経済の改善に伴って徐々に上昇率を高めていくという基本的な考え方に大きな変化はありません。