侵攻から2年 終わりの見えない戦闘 ウクライナ人の領土断念という「不確かな選択肢」の意味 #平和を願って
ロシアがウクライナに全面的な軍事侵攻してから2月24日で丸2年になる。ウクライナでは東部や南部の要衝を中心に今も激しい戦闘が続き、兵士や市民の犠牲は日々増え続けている。間もなく3年目に突入する戦争の終わりが見えない中、現地の世論調査では「停戦のために領土を諦めることもあり得る」という意見が以前よりも増えているという。ウクライナの人々は今、どのように日々を過ごし、「今後」についてどう考えているのか。2022年3月下旬から約2カ月、ハルキウやザポリージャなどウクライナ各地を取材したディレクターが、あらためて現地の人たちの思いを尋ねた。(文・写真:ライター、ディレクター・伊藤めぐみ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「みな疲れて燃え尽きてしまった感じ」バフムトで見た光景
ウクライナで会ったのは2年前、ビデオ会議のZoom画面越しに1年ぶりに見るマキシム・バイネル(27)は、少しやつれているようだった。2022年のロシア軍によるウクライナへの全面的な侵攻開始から2月24日で丸2年を迎えるにあたって話を聞きたいと伝えると、
「そうか、もう2年になるんだね」 と今、初めて気づいたように答えた。ウクライナ南東部に位置し、ロシアが占拠する欧州最大規模の原発があるザポリージャ州にマキシムは住んでいる。彼の家があるザポリージャ市は占領を免れているため、侵攻開始当初から、ロシアによる占領から逃れてきた人たちに避難所で衣食を提供したり、外国のNGOの通訳をしたりするボランティア活動に奔走してきた。そんな彼にとって「2年」という節目は特に大きな意味を持つものではなかったようだ。 昨年の今ごろは、ウクライナ東部の激戦地バフムトなどの前線近くで、「医療避難」のボランティアをしていた。治療を必要とする兵士や一般市民を迎えに行き、設備の整った比較的安全な地域にある病院まで救急車で運ぶ。アメリカのNGOが主体となって活動する中、通訳や連絡調整の業務を担っていたという。 「バフムトの近くには、砲撃で破壊されて廃墟みたいになった村もあった。ずっと砲撃の音が聞こえているんだ。僕もけが人や兵士を運んだ。亡くなった人もいたよ」