アメリカ、韓国、日本、そしてドイツ、フランス…なぜ世界中で「民主主義」は機能不全に陥りだしたのか
(舛添 要一:国際政治学者) 年が明ければ、アメリカではトランプ政権が発足する。韓国では、尹錫悦大統領による戒厳令布告、弾劾と混乱が続く。日本でも、少数与党の石破政権は難しい政権運営を迫られている。巨大化する中国を前に、アジア太平洋地域の民主主義が脆弱化している。 【写真】ドイツの次期首相の最有力候補。最大野党会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」を率いるフリードリッヒ・メルツ氏 そして、ヨーロッパでも、EUの中核であるドイツとフランスで政治が不安定化している。権威主義の勢力拡大に対して、ヨーロッパの民主主義は持ちこたえられるのか。 ■ ドイツ経済の不振 12月18日、ホンダと日産が経営統合について協議していることが明るみに出た。電気自動車の分野で、中国のBYDなどに先を越されている状況に危機感を抱いた両社の決断である。この中国台頭による苦悩は、日本のみならず、ドイツでも同じである。これまで、ドイツの自動車メーカーにとっては、中国は国外の大きな市場であったが、BYD等のEVに蚕食されてしまった。中国製のEVは、ヨーロッパ市場にも進出している。 さらには、ウクライナ戦争によって安価なロシア産天然ガスの供給が途絶えたことも、エネルギー価格の上昇を通じてのコスト高に繋がった。 フォルクスワーゲン(VW)社は、製造コストの割高な国内工場の閉鎖を検討している。1937年に創業してから初めてのことである。国内の6つの工場では12万人が働いているが、経営側は、大規模な人員削減は不可避と考えており、労使の対立が深まっている。 ドイツ企業の苦しい状態はVWのみにとどまらず、ドイツ経済全体の不振が募っている。2023年のGDP成長率はマイナス0.3%で、2024年もマイナス0.2%という見通しである。G7の中で最低で、唯一2年連続のマイナス成長である。2025年には、1.1%とプラスに回復すると見られている。しかし、インフレも伴い、スタグフレーションの状況になっている。 また、トランプ次期政権がウクライナ支援に消極的な中で、防衛費増額の重圧が欧州同盟国にかかっている。さらには、老朽化したインフラの改修にも多額の予算が必要である。その分、財政負担が必要で、国の借金も増える。