目立つ日本株の弱さ 鍵を握るのは…データから見る
3万円を超えていた日経平均株価は、このところ上昇基調が一服しており、最近は海外株との対比で弱さが目立ちます。その背景には日本国内の景気の弱さが関係している可能性が濃厚です。以下、最新のデータを整理していきます。(第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミスト) 【グラフ】コロナ不況なのになぜ空前の株高? 謎ひも解く3つの要因
◇ 英調査会社IHS Markit社が公表する6月の各国PMI(購買担当者景気指数)が出そろいました。この指標は同社が世界各国の企業に統一的手法で景況感を調査するもので、指数の上昇は前月から業況が改善したことを示します。
●「製造業」欧米は高水準続く
まず、世界の製造業の動向を包括的に示すグローバル製造業PMIに目を向けると、6月は55.5と異例の高水準を維持しました。国別では、米国が高水準で横ばい(62.1)、欧州は高水準(63.1→63.4)から一段と水準を切り上げました。アジアでは日本が52.4へと0.6ポイント低下した反面、韓国(53.7→53.9)が小幅上昇、感染拡大を受け厳格な活動制限を講じた台湾(62.0→57.6)は低下。それでも先進国の製造業PMIは59.5とパンデミック発生後の最高付近を維持しました。世界的にIT関連財の旺盛な需要が存在する下、自動車販売は米国が好調持続、欧州も持ち直しに転じたことで、製造業の業況は改善傾向を維持しています。 他方、新興国の製造業PMIは51.3へと0.9ポイント低下しました。中国(52.0→51.3)の減速に加え、マレーシア、ベトナムなど感染状況の芳しくない国が低下しました。このように一部に弱さがみられるものの、全体としてみれば製造業の強さは保たれています。
●「サービス業」弱さ際立つ日本
次にグローバル・サービス業PMIに目を向けると、6月は57.5と5月から2.1ポイントの低下でしたが、パンデミック発生後では2番目に高い水準を維持しました。米国(70.4→64.6)が異例の高水準から低下したものの、ユーロ圏(55.2→58.3)は改善基調を強め、パンデミック発生後の最高水準を記録しました。米国と欧州の力強い回復を主因に、先進国のサービス業PMIは59.8とリーマンショック後のリバウンド期にすら実現しなかった領域で推移しています。 そうした中、弱さが際立つのは日本です。6月のサービス業PMIは48.0でした。2020年2月以来17か月連続で50を下回っており、2017~19年平均の51.7を大幅に下回っています。 日本のサービス業PMIの弱さについては、他のマクロ指標と整合的でこの期に及んで改めて指摘するまでもありません。今後、大きく見れば、ワクチン接種の進展に伴いリバウンドが期待されるところですが、経済活動制限が大幅に緩和されても、米国のような力強いリバウンドはおろかサービス業PMIが50を回復する状況にすらならない可能性があることは留意しておく必要があるでしょう。