新型コロナで露呈した各国の「権力」と「民力」、そして「質の国力」
欧米・自由が優先
今回、欧米は感染防止に失敗したといっていいだろう。特にアメリカ(合衆国)はかなり悲惨である。 よくいわれるように、欧米と東アジア・オセアニアには、疫学的なファクターX(BCGワクチン接種、交差免疫など)の違いもあるだろうが、欧米は長いあいだ文明の先進国として、医療技術もその体制も国民の意識も高いと信じられてきただけに、この結果はかなり意外であった。社会的な原因を考えてみる必要はあると思われる。 欧米諸国は、個人主義、自由主義が発達し、中国とは逆に「権力」が強くない。しかし「民力」は強いと、われわれは信じてきた。ところが今回、国民としての判断力も、団結して行動する力も強くはなかったのだ。それに加えてヨーロッパは、難民問題とテロ事件などもあり、人種と宗教が絡んだグループ化が進んでいて、統一行動を取りにくかったのではないか。 アメリカはこのコロナ禍で、社会的弱点を露呈した。トランプというやや特異な大統領の任期中であったこともあり、ちょうど大統領選と重なったこともあり、人種、思想、学歴などによる国民の分断と、ウイルスに対する考え方の違いが重なって、暴動にまでつながった。そうとうの予算を注ぎ込んでいる自慢のCDC(疾病予防管理センター)も満足に機能しなかった。世界一の大国でありながら、権力と民力の軋轢が表面化したのだ。戦後、この国をひとつのモデルとしてきた日本人には「アメリカとはこんな国だったのか」という驚きさえあった。
韓国・権力の振幅
日本の前に韓国について考えよう。比較になりやすい。 当初感染が広がったが、徹底した検査と隔離によってほぼ抑え込み、文在寅大統領は「K防疫」として内外に宣伝した。この点は、検査も隔離も徹底せず、国民の自粛によって曖昧なまま第1波を抑え込んだ日本とは違っている。しかしこのところ感染者が急増し、文政権の支持率も下がっている。日本に似て、かなり危機的な状況が続いている。 中国と同様、韓国人の個としての力が弱いとは思えない。大学進学率はきわめて高く、一人当たりGDPも日本と同等で、民力は強いはずだ。しかし富が財閥に集中し、格差が大きいことから、受験や就職における競争が激しく、「恨の文化」ともいわれ、集団としての民力には、いったん事があるとポキンと折れるような脆弱さがあるようだ。それがこの結果につながっているのかもしれない。 権力もこれに似て振幅が激しい。政権交代のあと、前大統領に重い刑罰が科せられるのは、権力が強いとはいえないだろう。長いあいだ中国の間接的な支配力を受け、三国(高句麗、新羅、百済)の歴史もあり、近年は日本に併合され、現在は南北に分断されている。つまり主体的な国家権力としての経験が浅く、成熟していない印象を受ける。「権力の振幅の大きさ」は、この国の文化的問題点である。