国民は菅政権に強い力を求めているのか? 「強権の日本史」から
日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかったことが依然として大きな問題となっています。菅義偉首相はメディアのインタビューで「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」などと語っていますが、具体的な理由は述べていません。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は「政策に反対したことによって任命を拒否されたのだとすれば、この政権にかなり強権的な姿勢を感じざるをえない」とした上で、本当に菅政権が「強権的」なのかどうかを考えているようです。若山氏が独自の視点で論じます。
今の日本に強権は必要か
日本学術会議の任命拒否問題が尾を引いている。 前回この欄で、今の日本の学者たちは会議に忙殺されて研究に没頭できていないと書いた。その意味で、任命拒否問題が学界、特にその権威のあり方に一石を投じることを良しとした。とはいえその6人の学者が、政策に反対したことによって任命を拒否されたのだとすれば、この政権にかなり強権的な姿勢を感じざるをえない。好スタートを切った菅政権だが、意外な強面に、高かった支持率も下がり気味で、批判する側からは「弾圧、独裁、ファシズム、ヒトラー」といった穏やかならざる言葉も飛び出している。 はたして菅政権は強権的なのであろうか。 たしかに安倍政権は、集団的自衛権や共謀罪に関する法案をかなり強行に可決した。菅政権は、縦割り打破、規制改革、デジタル化といった内政改革を、そうとうの抵抗を覚悟で断行しようとして、学者の世界も聖域ではないということのようだ。だいぶ前に安倍政権を「安倍・菅政権」と書いたが、この二つの連続的な政権は、これまでになく強い姿勢の政権だといわざるをえない。菅義偉という政治家の「苦労人」とは別の顔が見えてくるようだ。 今の日本には「強い政治権力」が必要なのであろうか。まださほど低いとはいえない支持率から、新型コロナウイルスへの対応と、自国第一主義化する世界の趨勢の中で、国民は強い政権を望んでいるようにも思える。ここはひとつ歴史的に考えてみたい。