芥川賞のピース又吉氏、今後もお笑いを100やりつつ小説を書く
第153回芥川賞と直木賞が16日夜、発表され、芥川賞は羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」と、又吉直樹「火花」の2作が受賞した。直木賞は、東山彰良氏の「流」が受賞した。その後、受賞した3氏が会見し、喜びを語った。 【アーカイブ動画】第153回 芥川賞・直木賞 受賞者が記者会見
■芥川賞・又吉直樹氏
初ノミネートで芥川賞を受賞した又吉氏は、金屏風の前で会見する気分を問われ、「嘘みたいな感じ。似合ってますかね? 金屏風」と笑わせた。 太宰治や芥川龍之介が好きで小説を読み始めたという又吉氏。いつもテレビで太宰好きをアピールしているが、「たまに申し訳ない気持ちになる。そういうときは三鷹に(太宰の)お墓参りに行っている」という。 今作を書いたきっかけについては、執筆を持ちかけられたことが大きい要因としながら、「急にテンションが上がった。ジャッキーチェンの映画を見た翌日に階段を走りながら駆け上がりたい衝動に駆られる、あの感じ」と独特の言い回しで説明。その又吉氏のテンションを上げたのは、前回直木賞を受賞した西加奈子氏の作品で、「(西氏の)『サラバ!』を読んで“無敵”になった気持ちになった。すごく面白い作品で大好き」と明かした。 今後については「書きたいなという思いはある」と次回作への意欲を見せたが、お笑いと小説との比重について問われると、「芸人を『100』でやって、それ以外の時間で書くというスタンスでやってきた。その姿勢は崩さないようにしようと思っている。それが一番どちらにとってもいい」とあくまで本業のお笑いは続けていくという。 ライブをやっていて、そこで気づいたこと、お笑いで表現出来なかったことがあり、「それがそのまま小説にはならないが、どこかで残っていて、文章を書くときの一歩目になることが多い」と、お笑い活動が執筆活動にとっても必要なのだと語った。
■芥川賞・羽田圭介氏
又吉氏とともに芥川賞を受賞した羽田氏は、「又吉さんの作品を(雑誌やテレビで)3回くらいおすすめした。おすすめした本が受賞してよかった」と笑わせた。 介護などを扱った受賞作については、「社会問題を描くというより、結果としてそういう問題を内包する距離感の問題を考えた」と語った。 具体的には、いまはマスコミでも右か左か、若者かお年寄りかで「対立構造」をつくることが幅を利かせている、と指摘。それは「憎む相手の顔が見えないからだろう。地元の祖父母から離れて暮らす人は老人の顔が見えない。だから年上のことを優遇されていると言って、簡単な二分化された構図をつくってしまう」と説明し、それはアジアやヨーロッパなど地理的に近い国が仲が悪い例にも当てはまるとした。そして「相手の顔を見ずに何かを言うのは簡単。相手の顔が見えたときにどういう行動を取るか? それを書こうと思った」と解説した。