Jリーグ&NPB「新型コロナ対策会議」の専門家が独自見解「サッカーは濃厚接触ではない」
再開される公式戦のピッチに立つための義務として、Jリーグは大規模なPCR検査を実施していくことを決めている。J3までを含めた全56クラブに所属する選手、コーチ陣、スタッフ、審判団ら3680人を一度の検査の上限に設定。6月20日から2週間ごとに、年末まで全14回が予定されている。 発熱や倦怠感などをまったく訴えていなかったランゲラックのように、感染経路のわからない無症状感染者が決して少なくない数で確認される事態は、すでにJリーグでも織り込み済みとなっている。 ただ、一般社会生活における濃厚接触者の定義をそのまま当てはめていけば、公式戦の再開前や再開後においても、グランパスのように活動休止を余儀なくされるクラブが出てきかねない。 隔離者が続出し、公平公正な状態で戦えないクラブが出てくる事態を見越し、Jリーグは3月中旬の段階で今シーズンの「昇格あり、降格なし」を特例で決めている。 ただ、未知の新型コロナウイルス禍と対峙していく上で、村井チェアマンは「走りながら考える」とモットーを掲げてきた。 世の中を取り巻く状況が刻々と変化してきたからこそ、柔軟な思考のもとで、さまざまな議論が交わされてきた。その過程でサッカーにおける濃厚接触者の定義も必要なのではないのか、という考えに行き着いた。9日に開催される臨時実行委員会へ向けて村井チェアマンがテーマのひとつを明かす。 「今回の会議で専門家の先生方にご指導いただいたことをベースにしながら、最終形ではありませんけれども、PCR検査に関するガイドラインやプロトコルを実行委員会で諮る予定です」 確かに最新となる4つ目の定義は、サッカーには当てはまらないだろう。一方で既存の定義のなかに「気道分泌液もしくは体液など――」が含まれていることを踏まえれば、ピッチ上での接触プレーや至近距離での罵り合い、試合前後やハーフタイムのロッカールームでの接触などが懸念されてくる。 いずれにしても、独自の濃厚接触者の定義を運用していくには、所管する保健所だけでなく医療行政のトップを担う厚生労働省との合意も、国民の理解を得る上で必要となる。最初の一斉PCR検査が迫ってきたなかで、避けて通れない課題を乗り越えていくための、待ったなしの議論が進められていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)