大谷翔平の活躍に考える「時代と性格」 僕らはそれぞれの惑星からやってきた?
日本代表がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝してから1カ月以上が経ちました。まだ激闘の余韻に浸っている人もいるのではないでしょうか? 野球ファンのみならず、多くの人を魅了した日本代表の中心にいたのは、紛れもなく大谷翔平選手でした。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、大谷翔平選手について「ピッチング、バッティング、キャラクターと、いわば三刀流である」と語ります。そして、こうした選手の登場に「時代の性格」の一面を見ているようです。若山氏が独自の視点で語ります。
いわば三刀流
WBCでの活躍で、大谷翔平選手の名声はさらに高まった。日本とアメリカを超えて世界的である。しかもそのマナーと人柄の良さが話題となっていて、話の内容もなかなか意味深い。そういったことも人気と実力発揮の一要素と考えれば、彼は、ピッチング、バッティング、キャラクターと、いわば三刀流である。日本から世界に向けて、これだけそろったアスリートが出るのは歴史的な事件かもしれない。 少し前に、野球の落合監督とサッカーの森保監督を比較して、スポーツの指導者として「嫌われる」のと「慕われる」のとどちらがいいのか比較した(THE PAGE「慕われる監督と嫌われる監督 森保、落合から考える指導者の資質とは?」、1月28日配信)。結論として、実績を残したのはどちらかのタイプに属し、どちらにしても情熱と信念のある指導者だと書いた。 今回のWBCで印象的だったのは、栗山監督をはじめ、大谷も、ダルビッシュも、ヌートバーもそのお母さんも、その他の日本人選手も、みんな「いい人」だったことである。今の日本人はみな、こんなに善人で礼節をわきまえているのだろうか。いやまてよ、日頃、スマホ片手に電車に乗り込み、年寄りを押しのけて座ろうとする若い人たちを見ているので、そうは思えない。 この落差は何だろう。厳しいスポーツに挑む礼節をわきまえた人と、スマホのゲームに夢中で周囲を見ようとしない人と、今の日本人は二分されているのだろうか。これもいわゆる「分断」だろうか。僕はここに「時代の性格」の二つの側面が現れているような気がした。