なぜ森保ジャパンは崖っぷちの豪州戦に勝てたのか…「4-3-3」に戦術変更するなど一変した指揮官の采配と選手の危機感
「素晴らしい先輩方がいるなかで選ばれた責任があるし、日本代表の進退がかかった試合でもあった。正直、僕のサッカー人生でこれ以上の緊張はない。この試合が終わって引退してもいいと思えるくらい、後悔のないプレーをしようと思っていたので」 移籍して間もない状況が考慮されて9月シリーズは招集が見送られ、0-1で屈した日本時間8日未明のサウジアラビア戦をリザーブで見届けた東京五輪代表の23歳は、出番が訪れるとしてもダブルボランチの一角だと想定していた。 しかし、一敗も許されない崖っぷちで森保監督が選んだのは、慣れ親しんだシステムの[4-2-3-1]ではなかった。ほぼぶっつけ本番の[4-3-3]で田中は守田とともに、アンカーの遠藤航(28・シュツットガルト)の前でインサイドハーフを託された。 システムだけでなく選手も変え、しかも今最終予選で初先発となる田中と守田を左右対で起用した理由を、森保監督は試合後のオンライン会見でこう説明した。 「今回の代表活動におけるトレーニングで、2人は非常に存在感のある取り組みをしていた。まずは2人のコンディションのよさを見て先発で起用しようと考え、そしてオーストラリアとのマッチアップを考えたときに日本のストロングポイントを出せて、相手のよさを消せる戦い方を考えたときに、今日の形が一番いいと判断しました」 チームの心臓に君臨する遠藤との共存を考えたときに、ボランチの柴崎岳(29・レガネス)とトップ下の鎌田大地(25・アイントラハト・フランクフルト)を田中と守田に代え、その上で逆三角形型にする中盤がまず決まった。 キーパーと最終ラインはそのままなので、おのずと前線は3トップになる。真ん中の大迫勇也(31・ヴィッセル神戸)、左の南野に加えて、右には累積警告による出場停止が明けた伊東純也(28・ヘンク)を配置。攻守両面で前線へより人数をかける、過去のデータにはなかった日本の戦い方がオーストラリアを混乱させ続けた。 もっとも、カギを握る3人の中盤の連動性を練り上げる時間は、サウジアラビア戦後の移動をへて、9日から再開された練習のなかで十分に取れたとは言い難い。 それでも田中と守田は昨シーズンまでの川崎フロンターレで、遠藤と守田は今年前半のA代表戦で、そして遠藤と田中は今夏の東京五輪でコンビを組んでいる。たとえ即興の形でも、3人の卓越した個人戦術は必ず至高のハーモニーを奏でる。信じて送り出した森保監督は「私が特別何かをしたことはない」と、誰よりも選手たちを称えた。