なぜ森保ジャパンは崖っぷちの豪州戦に勝てたのか…「4-3-3」に戦術変更するなど一変した指揮官の采配と選手の危機感
「選手たちがベースの部分を確認しながら、形が変わるところ、役割が少し変わるところをトレーニングから、そしてピッチの外でもすごく密にコミュニケーションを取りながらいい準備をしてくれた。選手たちが意識を高く持ち、お互いのイメージを合わせながら試合に臨んでくれたことがパフォーマンスに直結した一番の理由だと思う」 意識を共有する作業は、戦術面以外でもチーム内に浸透している。 たとえばオーストラリア戦前日に、キャプテンのDF吉田麻也(33・サンプドリア)が「サッカーに携わるすべての人たちの死活問題になる」と訴えた、カタールワールドカップ出場を逃しかねない現状は、田中が「日本の進退がかかった試合」と言及したように、森保ジャパンに関わる全員が抱く危機感と化していた。 南野に代わって後半33分に投入された浅野も、ピッチに入る刹那に「僕たちがいま、崖っぷちに立たされているのは全員が承知している」と自らに言い聞かせていた。 「だからといって、誰一人としてあきらめている選手はいない。僕自身も、絶対に自分が試合を決めるんだ、という強い気持ちで試合に入りました」 後半25分に日本は同点に追いつかれていた。守田が相手選手を倒したとして宣告されたPKがVARの介入をへて直接フリーキックに変更され九死に一生を得た直後に、MFアイディン・フルスティッチに豪快な一撃を叩き込まれていた。 浅野の執念が勝ち越しゴールを生み出したのは後半41分だった。 吉田からのロングフィードを絶妙のトラップで収め、素早い反転からペナルティーエリア内の左側へ侵入。DFトレント・セインズブリーがブロックに飛び込んできても怯まずに左足を振り抜くと、シュートはその右足に当たってコースを山なりに変えた。 キーパーのライアンが必死に伸ばした左手を介して、さらに軌道を変えたボールは右ポストを直撃してはね返ってくる。絶対にあきらめてなるものかと、FW古橋亨梧(26・セルティック)が必死に詰める。果たして、ボールは古橋をマークしてきたベヒッチの左すねのあたりに当たり、ゴールのなかへ転がり込んだ。 記録はオウンゴールながら、浅野は我を忘れたように喜び、すでにベンチへ下がっていたDF長友佑都(35・FC東京)と大迫、リザーブのメンバーらが手荒い祝福にかけつける。ベンチ前では森保監督と横内昭展コーチが拳でタッチを交わしていた。 経験したことのない逆境を分かち合い、打倒・オーストラリアをかけて一丸となったチームを象徴する泥臭い決勝ゴール。逆境のなかには采配が問題視される森保監督の解任をネット上で求める、ファン・サポーターの厳しい声も含まれている。 「今日の試合だけで、特に進退がかかっているとは思っていない。代表監督に就任してからは常に、試合を終えた後に監督としての道が続くのか、あるいは終わるのかという岐路に立たされていると思っているので」