日銀短観、先行き判断DIは慎重だが「ポジティブ」
日銀は13日、12月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表しました。今回の短観をどう読み解くか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】目立つ日本株の弱さ 鍵を握るのは…データから見る
自動車は大幅回復に期待 宿泊・飲食は大幅改善
日本銀行が3か月に一度公表する日銀短観(12月調査)によると、業況判断DIは大企業製造業が+18と前回調査比で横ばい、大企業非製造業が+9と前回調査から7ポイント上昇しました。先行き判断DIは大企業製造業が+13、大企業非製造業が+8と双方とも現況対比で慎重な見通しが示されました。 大企業製造業は、電気機械(+31)、生産用機械(+39)、はん用機械(+30)、化学(+29)などコロナ禍で耐性を発揮してきた業種を中心に強さが続きました。電子部品、半導体製造装置の需要好調などが背景にあります。他方、半導体不足が足かせになった自動車は▲8と弱さが続きました。もっとも、生産計画ベースでは自動車の供給制約は快方に向かっており、次回調査では大幅な回復が期待されます。実際、自動車の先行き判断DIは+2へと現況対比10ポイントの改善が示されました。 大企業非製造業は、対事業所サービス(+42)、情報サービス(+34)、通信(+29)、不動産(+26)などで強さが続きました。また予想された通り、対個人サービスは▲9と36ポイント(前回調査比)改善し、宿泊・飲食サービスも▲50へと24ポイント(同)改善しました。小売は+3で7ポイント(同)改善でした。
大企業全産業の業況判断DIは4ポイント改善
大企業全産業でみると、業況判断DIは+14と4ポイント(同)改善しました。日銀短観の「大企業全産業」とは、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄と近い属性を有する企業群ですから、これは株式市場にとってポジティブな数値です。業況判断DIの上昇は業績に上方修正の余地があると読み替えることができます。 実際に、大企業全産業の業況判断DIとTOPIXの予想一株当たり利益(EPS)は同様の軌道を描く傾向が確認されています。連動性を有する理由としては、直近の業績進ちょく度合いが自社計画を満たした場合に企業は「良い」と回答する傾向があるからです(※日銀短観は比較時点を問わずに直近の収益状況を「良い」「さほど良くない」「悪い」の3択でヒアリングする)。こうした数値から判断すると、企業業績は一段の拡大が期待されます。