米国の利上げ観測に急展開? FOMC議事要旨、ハト派連銀総裁が驚きの発言
米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げをめぐり、これまでと一転して早期利上げに踏み切るのではとの観測が浮上しています。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【表】パウエル議長再任決まったFRB 新体制はタカ派? ハト派? 量的緩和終了は早まるのか
FOMC議事要旨「予想よりも早期に」
11月24日(日本時間5日)に発表されたFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨(11月2、3日開催分)から判断すると、量的緩和の段階的縮小いわゆるテーパリングは、その減額ペースが加速する蓋然性が高まっていると考えられます。同時に、このことは2022年に複数回の政策金利引き上げがあることを意味しています。早ければ12月14、15日に開催されるFOMCでテーパリング加速が決定され、量的緩和は3月に終了します。 そう考えると2022年3月に利上げが開始されても不思議ではありません。NY連銀が取りまとめている調査によれば、9月の段階では2023年半ばの利上げ開始を予想する向きが支配的だったので、最近のFRBの変化は目を見張るものがあります。株式市場に広がっていた「金融緩和が長く続く安心感」は急速に薄れています。 公表された議事要旨には「さまざまな(FOMC)参加者が、インフレ率が目標水準よりも高くなり続けた場合、FOMCは資産購入のペースを調整し、政策金利の誘導目標レンジを参加者が現在予想しているよりも早期に引き上げる態勢を整えるべき」との記載がありました。その後発表された10月の消費者物価や雇用統計など一連のデータは、上記見解を示した「さまざまな参加者」にとって、引き締めスケジュールの前倒しを検討するのに十分なほど強い結果であったと考えられます。また、それまでハト派(金融緩和に積極的)な見解を固持していたFRB高官も動かしたと思われます。
ハト派の連銀総裁が「利上げ派」に転向
筆者にとって、FOMC議事要旨の内容以上に驚きだったのは、FOMC参加者でハト派の代表格であるデイリー・サンフランシスコ連銀総裁のインタビューです(11月24日の取材)。同総裁は「これまでの状況が続けば、私はテーパリングのペース加速を全面的に支持するだろう」、「消費者物価指数(CPI)の月間の数字が再び高進した。これが続けば、これらはテーパリングの加速が必要なようだと示唆するものになる」などと発言し、その上で「来年後半に1回、または2回の利上げが行われたとしても驚きはしない」としました。 同総裁は10月22日時点で「現時点で利上げを行なっても世界的な供給網を巡る問題は解決せず、むしろ来年の経済成長が阻害され、生産と雇用の双方が犠牲になる恐れがある」との見解を示していたので、2022年の「利上げ開始派」に転向したことは驚きです。 もはやハト派に分類されるFRB高官ですらテーパリングの加速を支持し、利上げに前向きになっていることから判断すると、テーパリングの加速は既定路線と考えるのが自然でしょう。直近ではクラリダ副議長、ウォーラー理事、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁がテーパリングの加速を支持していました。最重要人物であるパウエル議長の見解が変化していても何ら不思議ではありません。