日経平均が31年ぶり高値 背景にある要因は?
9月14日の東京株式市場は日経平均株価の終値がバブル崩壊後で最高値をつけ、約31年ぶりの高値水準となりました。この背景に何があるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】コロナ不況なのになぜ空前の株高? 謎ひも解く3つの要因
中国経済に対する不安が後退
9月14日に3万670円と年初来高値を更新した日経平均。年初来安値(2万7013円)を付けたのはわずか16営業日前の8月20日でした。この急激な株価上昇の背景に新政権の政策期待があるのは事実ですが、その時との比較で世界経済、とりわけ中国経済に対する不安が後退している点は認識しておく必要があるでしょう。
8月16日に発表された中国の7月経済指標(鉱工業生産、固定資産投資、小売売上高)は中国経済に対する不安を喚起する結果となり、コモディティ価格(国際商品市況)の下落に拍車をかけました。8月19日に米WTI原油先物は62.3ドルと5月以来の安値圏に沈み、その前日には銅価格が急落し4月13日以降で初めて9000ドルを下回っていました。 他方、最近のコモディティ価格は回復基調にあります。米国と欧州の景気回復が持続する中、中国の8月貿易統計が予想外に底堅かったことが背景です。WTI原油は9月13日に8月3日以来となる70ドルを回復し、銅は9月10日に9700ドル近傍まで切り返し、8月下旬の急落の大部分を埋めました。またアルミは同日に2924ドルへと急上昇。最大の供給国である中国の生産抑制が主因ですが、ベースには最大需要国でもある中国の需要堅調があるとみられます。 鉄鉱石価格は依然として低位にありますが、これは中国政府の鉄鋼産業に対する規制強化が強く効いており、やや例外的な動きと考えられます。この間、安全資産としての性格を有する金価格は概ね横ばいで推移しています。
「銅金相対価格」も回復基調
景気の強さを反映する「銅」と安全資産としての性格を有する「金」を比較した「銅金相対価格」は8月19日をボトムに回復基調をたどっています。この指標は世界経済の回復速度を計測するのに有用で、その波形は金融市場で流れる“空気”にも一致します。 日本株急上昇の理由として、新政権に対する政策期待や国内コロナ感染状況の安定という日本固有の要因があるのは事実ですが、このように世界経済(特に中国)のダウンサイドリスクが後退しつつあることも重要でしょう。日経平均株価の年初来安値(8月20日)と銅金相対価格の直近ボトム(8月19日)のタイミングはほぼ一致していたのは偶然ではないでしょう。
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